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中欠損の傍膜様部心室中隔欠損に対する保存的アプローチ
山形大学医学部小児科1),第二外科2)
鈴木 浩1),仁木 敬夫1),小田 切 徹州1),吉村 幸浩2),前川 慶之2)

【背景】中欠損の傍膜様部心室中隔欠損は左室の容量負荷を来し,乳児期にうっ血性心不全を呈するが,欠損孔の自然閉鎖傾向に伴い,血行動態の改善がみられることが多い.当院において中欠損の傍膜様部心室中隔欠損に対して保存的アプローチを原則とした1999年以降の本症について臨床的に検討した.【対象・方法】1999~2007年に出生し,当院と関連病院で経験した,小さな心房中隔欠損あるいは卵円孔開存以外の合併心奇形のない中欠損の傍膜様部心室中隔欠損34例を対象とした.中欠損の心室中隔欠損は,多呼吸,陥没呼吸などの心不全症状を呈し,心エコー図で左室拡張末期径が120%正常以上あるいは左房・大動脈径比が1.5以上の左心容量負荷所見を認め,肺高血圧がないか軽度である例とした.臨床所見などを診療録を用いて後方視的に検討した.【結果】34例中手術適応と判断したのは 3 例であった.1 例は体重増加不良が持続し,著明な左心容量負荷を呈した例で 1 歳 4 カ月時に手術を施行した.ほかの 2 例は,左心容量負荷所見が持続し,大動脈弁の逸脱と逆流を合併し,いずれも 6 歳時に手術を施行した.未手術例31例で,左心容量負荷が改善したのは 1 歳までが19例で,2 歳までが 3 例,6 歳までが 6 例であった.未手術例4例で大動脈弁逆流を認めたが,大動脈弁の逸脱はみられず,3 例では逆流はのちに消失した.心室中隔欠損の自然閉鎖が 3 例に認められた.肺高血圧や感染性心内膜炎を合併した例はなかった.【結論】中欠損の傍膜様部心室中隔欠損の約半数は 1 歳までに左心容量負荷所見が改善し,6 歳までには約 8 割が改善した.中欠損の傍膜様部心室中隔欠損に対しては保存的治療を行い,高度の左心容量負荷が持続したり,大動脈弁逸脱・逆流を合併する例は手術を検討すべきである.

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