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小児心臓外科術後創感染に対するバンコマイシン骨蝋の有用性と安全性に関する検討
三重大学大学院医学系研究科胸部心臓血管外科1),小児科2)
横山 和人1),高林 新1),新保 秀人1),米川 貴博2),大橋 啓之2),早川 豪俊2),三谷 義英2)

【目的】現在われわれは術後の創感染の予防のために,胸骨正中切開の再手術例の閉胸の際にバンコマイシン(VCM)骨蝋を胸骨間に局所投与している.術後創部離開,縦隔炎の予防におけるVCM骨蝋の有用性および安全性につき検討した.【対象と方法】2002年 1 月から2007年12月までに当科で胸骨正中切開を施行した再手術症例118例〔平均年齢:23.1±24.8(0.4~156)カ月,平均体重:8.6±4.8(2.1~29.6)kg〕を対象とした.2005年12月まではおもにhigh riskの再手術症例に,2006年 1 月からは再手術症例全例に対し,VCM 0.5gを生理食塩水0.5mlと混合して蝋状とし,胸骨閉鎖前に胸骨断端に塗布して型のように閉胸した.VCM骨蝋使用群をV群(n = 51,palliation:5,BVR radical:32,BDG:5,TCPC:9),非使用群をC群(n = 67,palliation:12,BVR radical:31,BDG:14,TCPC:10)とし,創部離開または縦隔炎に対するVCM骨蝋の有用性および安全性につき検討した.【結果】両群間に年齢,体重,術式,手術時間,麻酔時間,体外循環時間および大動脈遮断時間の差を認めなかった.C群では5/67(7%:術後縦隔炎 2 例,創部離開 3 例)を認めたのに対し,V群ではいずれも認めず(0%),術後縦隔炎または創部離開の発生率は有意に少なかった(p < 0.05).V群において,術後腎不全(血中クレアチニン > 1.5mg/dl),創部の皮膚壊死または発赤を認めた症例は 1 例もなく,術後血圧低下などのアレルギー症状を呈した症例もなかった.VCM骨蝋使用例においても術後に有効血中濃度(25~40μg/ml)まで上昇した症例はなく,ドレーン排液中濃度も術後24時間で有効血中濃度以下に低下する症例が多数であった.【結語】VCM骨蝋は小児心臓外科術後創感染の予防に有用であると考えられた.今回の検討ではVCM骨蝋の使用による明らかな合併症を認めなかった.

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