III-B-19
房室リエントリ性頻拍と房室結節リエントリ性頻拍を有し興味深い伝導特性を示したWPW症候群の小児例
獨協医科大学心血管・肺内科1),小児科2)
籏 義仁1),宮本健志2),上嶋 亨1),中嶋貴秀1),西 悠1),景山倫也1),金子 昇1)

【症例】12歳の女児.小学校入学時の心臓検診でWPW症候群と診断された.洞調律時の心電図では I,II,III,V1誘導でpositivedであり,P-R interval = 120msであった.10歳ごろから労作や運動時に動悸を自覚するようになった.また,動悸とともに幻暈と吐き気を自覚することもあった.動悸発作時には,narrow QRS tachycardia(214/min)とwide QRS tachycardia(CRBBB,inferior axis,240/min)が確認され,どちらもプロカインアミドで停止可能であった.2007年 2 月14日,全身麻酔下に臨床心臓電気生理検査を行った.右室心尖部からの心室頻回刺激で房室結節の逆方向性ブロック(200/min)となった後,正方向性房室リエントリ性頻拍(TCL = 328ms)が誘発された.副伝導路の順方向性不応期(290ms/BCL 600ms)またはblock rate(220/min)後,slow/fast型房室結節リエントリ性頻拍(TCL = 320ms)が誘発された.頻拍中の心房最早期興奮部位はヒス近傍であり,narrow QRS tachycardiaを示した.頻拍中に左側側壁副伝導路を介する室房伝導も観察された.左側側壁の副伝導路に対する経皮的カテーテル心筋焼灼術後,slow/fast型房室結節リエントリ性頻拍がプログラム刺激で容易に誘発されるため,遅伝導路に対する焼灼術を行った.その後,イソプロテレノール投与下にプログラム刺激を行ったが,いかなる頻拍も誘発不能となった.全身麻酔の影響もありwide QRS tachycardiaは誘発不可能であったと考えられる.その機序としては,反方向性房室リエントリ性頻拍または副伝導路を介した房室伝導を伴う房室結節リエントリ性頻拍が考えられた.【まとめ】本症例は,房室リエントリ性頻拍と房室結節リエントリ性頻拍を有し,ほかにwide QRS tachycardiaも併せ持つWPW症候群の小児例であった.その興味深い伝導特性を検討したのちに,カテーテルアブレーションによる根治術を行った.

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