III-B-20
低充填量人工心肺回路導入による新生児開心術手術成績の向上
北里大学医学部心臓血管外科1),群馬県立小児医療センター心臓血管外科2)
宮地 鑑1),宮本隆司2),友保貴博1),板谷慶一1),鳥井晋造1),山本信行1),井上信幸1),小原邦義1)

【目的】新生児症例では,人工心肺による生体の炎症性反応は術後経過に大きな影響を与えると考えられている.われわれは2001年より回路充填量の削減を開始,現在,7kg未満症例では充填量140mlまで低量化している.新生児開心術における低充填量人工心肺の有用性を術後炎症反応と手術成績の観点から検討した.【対象と方法】2001年 1 月より2007年12月までの 7 年間に施行された新生児開心術症例55例を対象とした.術式の内訳はNorwood型手術:17例,動脈スイッチ手術(ASO):14例,大動脈離断/縮窄複合一期的根治術:9 例,総肺静脈還流異常修復術(TAPVC):5 例,大動脈弓形成術:4 例,体肺短絡手術 + 肺動脈形成術(BTS + PAP):3 例,房室中隔欠損症根治術(AVSD):1 例,その他:2 例である.日齢は平均10日,体重は平均2.8kg,人工心肺時間は平均172分(27~350分)であった.55例を充填量170ml以下(M群:35例)と充填量190ml以上(C群:20例)の 2 群に分けて,手術成績(手術死亡率および術後挿管期間)と術後炎症反応〔術中体重増加比(%BWG),術後 3 日間のCRP(mg/dl)最高値(p-CRP)〕を比較検討した.【結果】手術時日齢,体重,Aristotle score,人工心肺時間は両群間で差はなかった.手術死亡はM群で 3 例(8.6%)に対してC群では 6 例(30%)で有意にM群の手術死亡率が低かった(p < 0.05).術後挿管期間はM群の平均6.6±5.0日に対してC群では平均10.6±11.9日で,M群のほうが短い傾向がみられたが有意差はなかった(p = 0.09).%BWGはM群の平均 + 2.2±3.2%に対してC群では平均 + 4.4±3.4%で,M群のほうが有意に低かった(p < 0.05).p-CRPはM群の平均3.6±3.4 mg/dlに対してC群では平均7.8±5.0 mg/dlで,M群のほうが有意に低かった(p < 0.001).【総括】人工心肺充填量の削減によって,新生児開心術後の炎症性反応を軽減することが示された.結果として術後の全身浮腫も明らかに軽度で,手術成績も向上していることが示された.

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