III-B-32
当院におけるNorwood型手術成績の検討
北里大学医学部心臓血管外科1),群馬県立小児医療センター心臓血管外科2)
宮地 鑑1),宮本隆司2),板谷慶一1),友保貴博1),鳥井晋造1),山本信行1),井上信幸1),小原邦義1)

【目的】Norwood型手術の成績は本邦でも大規模施設を中心に近年めざましく進歩している.一方,Norwood型手術そのものを新生児期に施行しないで,初回手術に両側肺動脈絞扼術を選択する施設もみられる.当院では2003年 9 月より新しい小児心臓外科プログラムを開始,積極的にNorwood型手術を施行してきた.今回,その連続12症例の手術成績を検討した.【対象と方法】当院における手術治療は(1)低侵襲人工心肺の導入,(2)腕頭動脈送血による脳分離体外循環,下半身循環停止,(3)心停止下での自己組織による大動脈再建,(4)右室‐肺動脈導管による肺血流である.術前診断は左心低形成症候群(HLHS)および類縁疾患:8 例,大動脈低形成 + 大動脈離断/縮窄複合:4 例.手術時日齢は平均10日,体重は平均2.7kgで,手術危険性の指標であるAristotle scoreは平均17.6で,3 例が20以上であった.術前状態不良 3 例中 2 例に対して両側肺動脈絞扼術(PAB)を施行した.早産・低出生体重児の 1 例は状態の安定した 1 週間後にNorwood手術を施行した.もう 1 例は絞扼術後から狭小な上行大動脈のため冠循環不全を来し,PAB後 2 日目にNorwood手術を施行した.【結果】手術時間は平均370分(280~545分),人工心肺時間は平均184分(125~278分),大動脈遮断時間は平均79分(43~115分),下半身循環停止時間は平均64分(49~86分)で,全例人工心肺から離脱可能であった.手術死亡は 2 例(16.6%)で,PAB施行した早産・低出生体重児(Aristotle score:23.5)とpulmonary sling + 気管狭窄合併症例(20.5)であった.standard risk症例(Aristotle score 20未満)9 例の手術死亡はなかった.【総括】当院におけるNorwood型手術連続12症例の成績はほぼ満足できるものであった.両側肺動脈絞扼術の適応は限定的であり,high risk症例のなかでも適応外の症例があるため,standard riskの症例を含めて,まずNorwood型手術を第一選択として考えるべきである. 

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