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III-C-7 |
Williams症候群のトータルケア—当院における包括的遺伝子医療プロジェクト |
東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート1),循環器小児科2)
下島圭子1,2),古谷道子1,2),山本俊至1,2),古谷喜幸1),竹内大二2),稲井 慶2),中西敏雄1,2),松岡瑠美子1,2) |
【背景】Williams症候群(WS)は7q11.23のELNを含む領域の半接合体微小欠失を伴う隣接遺伝子症候群で,心血管奇形,特有な顔貌,精神発達遅滞を合併する.視空間認知障害を認める一方,優れた記憶力と豊かな音楽感性を有することが近年明らかになった.遺伝子欠失と表現型を比較し検討することは疾患の深い理解につながるため,当院では1998年からWilliams症候群の包括的遺伝子医療を行っている.【対象と方法】WS患者30例に対して,遺伝子検査,血液検査,神経系検査,知能検査を含む入院精査を行い,新たな表現型の検出と発症予防について検討した.【結果】IQの平均は48,全例70以下であったが,90%の症例においてVIQがPIQより高値であり,言語表出に優れていることが示唆された(差の平均 + 9.3).興味深いことには,70%に糖代謝異常を,83%に脂質代謝異常を認めた.また,80%にACTH高値を,71%にプロラクチン高値を認めた.免疫学的検査ではCD2+ 細胞数は83%の患者で年齢下限値よりも低値であり,PHA幼弱化反応の低下は72%,総免疫力の低下は39%に認めた.血管エコーでは総頸動脈のIMTの肥厚は90%,FMDの低下は76%,NIDの低下は41%で認めた.経時的に観察できた 6 例ではIMT(Lt)は 4 例,IMT(Rt)は 3 例,FMDとNIDはおのおの 2 例が基準範囲内に改善し,血管内皮機能障害を防ぐためのVitCとVitEの内服,和食中心の食事指導と生活指導で進行が予防できる可能性を示した.【結論】WS患者では極めて早期から糖代謝異常と脂質代謝異常を認め,生活習慣病に早期から罹患する可能性が示された.先天的に全身血管の中膜平滑筋層の肥厚を認めるWilliams症候群において,糖代謝異常と脂質代謝異常の早期診断は生活習慣病や動脈硬化への進展予防に有用であり,食事指導と生活指導が重要である.今後,ACTH高値と免疫能低下,プロラクチン高値とインスリン抵抗性に関しては,遺伝子欠失と表現型のさらなる検討が必要である. |
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