III-C-8
致死的染色体異常に合併した心疾患の診断と予後
弘前大学医学部小児科1),保健学科2),胸部心臓血管外科3)
高橋 徹1),佐藤 工1),上田知実1),北川陽介1),今野友貴1),江渡修司1),米坂 勧2),鈴木保之3),大徳和之3)

【緒言】近年,重篤な合併症を有する新生児に対して積極的な治療介入を選択する機会が増加してきた.当院における致死的染色体異常の診療の現状について検討した.【方法】2003年以降当科で経験した致死的染色体異常13例(18トリソミー 11,13トリソミー 1,9 トリソミー 1)の診断時期(胎児診断,出生後診断),合併心疾患,治療,予後を検討.【結果】(1)胎児診断 9 例:在胎27~37週で診断.胎児死亡 4 例(18トリソミー 3:合併心疾患はAVSD 1,VSD 1,2 度房室ブロック 1,9 トリソミー1:PA/VSD):在胎29~37週時死亡.出生 5 例(全例18トリソミー:VSD 4,DORV 1):出生直後から重篤な呼吸障害,循環障害,DICなどを伴い,家族が積極的治療を希望しない場合が多く,生後 1~22(平均 7)日で死亡.(2)出生後診断 4 例(18トリソミー 3:VSD 1,T/F 1,心疾患合併なし 1,13トリソミー 1:PA/VSD):生後 1~4 週で染色体検査結果判明.診断確定後も全例積極的治療を希望し,症例により外科治療(心臓手術,消化管手術,気管切開)を行った.3 例は生後 3カ月~2 歳 6 カ月で死亡.T/F,横隔膜弛緩症,胃食道逆流現象を伴った18トリソミーで生後 6 カ月時に右室流出路形成術,1 歳 5 カ月時に横隔膜縫縮術,噴門形成術,胃瘻造設術を行い,現在 1 歳 9 カ月でおおむね順調に経過している.【考察】13例中 9 例が羊水過多,子宮内発育不全,胎児奇形などから羊水染色体検査,胎児エコーにより診断された.出生前診断例は年々増加しているが,合併奇形が重篤なほど胎児診断されやすいこと,出生後診断例では出生直後の外界への適応時期を乗り越えた症例が紹介される傾向にあることから,胎児診断例で生存期間が短かった.出生後診断例では家族の患者への愛着が強く,積極的治療を希望する傾向があった.13例中12例が死亡し,予後は極めて不良であるが,適切な治療により長期生存が期待できる症例もあり,家族の意向を踏まえた慎重な治療方針の決定が重要である.

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