III-C-12
小児慢性心疾患における低アルブミン血症の病態との関係
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
岡田尚子,岩本洋一,増谷 聡,石戸博隆,竹田津未生,先崎秀明

【背景】低アルブミン血症は,透析患者や悪性腫瘍といった慢性疾患の予後の悪さと関係していることが知られている.慢性心不全患者もしばしば低アルブミン血症を示すことが知られているが,成人における心不全患者の低アルブミン血症が貧血の存在と並んで,心不全予後規定因子となることも報告されている.これは,肥満,るい痩双方でみられることや,他の慢性疾患でもみられることから,単にうっ水による希釈ではなく,栄養状態や炎症性サイトカインといった慢性疾患共通のものの関与が示唆されている.前回,われわれは初めて小児心疾患患者における血清アルブミン値が心不全重症度と密接な関連がある可能性を示した.今回,さらに症例数を増し,血清アルブミン値が示す心不全病態について検討した.【方法と結果】対象は当院で心臓カテーテル検査を行った小児慢性心疾患の205例.全例で血清アルブミン値を測定し,4.0g/dl以下(A群),4.0~4.5g/dl(B群),4.5g/dl以上(C群)の 3 群に分け,他の血液データ,心不全マーカー,炎症性サイトカイン,血行動態指標,BMIとの関連について検討した.3群間で年齢,血清ナトリウム値,ヘモグロビン値に有意差はなかったが,BNP値はA群が他群に比し有意に高値を示した(p < 0.05).さらにTNFα,高感度CRPもA群において有意に高値を示し,かつBMIはA群において有意に低値をとり,小児慢性疾患における低アルブミン血症が,慢性炎症消耗疾患としての心不全病態を反映している可能性があることを強く示唆する所見であった.【考察】アルブミン測定は簡易な検査であり,今後前方視的に予後との関連や,治療の介入による変化について評価し,血清アルブミンが有用かつ簡便な心不全マーカーになり得るかを検討する意義があると考えられた.

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