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III-C-16 |
肺血流増加型の単心室循環における肺循環と体循環の血流量関係.低濃度酸素吸入療法の効果に関する考察 |
福井県立大学看護福祉学部1),福井大学医学部小児科2),福井循環器病院小児科3),国立循環器病センター小児循環器診療部4),北野病院循環器センター5),えちごクリニック6)
齋藤正一1),田村知史2),西田公一3),黒嵜健一4),吉敷香菜子4),平田哲也4),渡辺 健5),越後茂之6) |
【目的】左心低形成症候群のように単一の心室が肺と全身へ血液を送る循環形態(単心室肺体並列循環)は特異な短絡特性を有する.このような患者への肺血流減少療法,特に低濃度酸素吸入療法の意義と効果を理論面から分析する.【方法】Barneaらが1994年に提唱し,われわれが本会(第42回)で紹介したFickの原理を用いた短絡分析法に肺血管抵抗変動時の束縛条件を仮定して数値解析した.分時酸素消費・供給量,動脈(= 肺動脈)・体還流・肺還流の各血中酸素含有度(飽和度)と肺/体血流の関係式から動脈血酸素飽和度から肺体血流比(Qp/Qs),またはその逆を推定する式が得られる.左心低形成症候群患者の術前心カテーテル血液酸素データをもとに定数値を定め,低濃度酸素吸入療法,すなわち吸入気酸素濃度低下と肺血流量減少が同時に起こる状況のシミュレーションを行い,酸素飽和度,酸素運搬量の挙動を観察した.【結果】(1)単心室肺体並列循環の心拍出量は単一心室の拍出ゆえに最少でも無短絡心室の 4 倍である(Qp/Qs = 1 のとき 2 倍としたBarneaらの推算は誤り).Qp/Qs≠1 ならさらに多い.左心低形成症候群の肺性ショック時などはQp/Qsも大きく,心室は過大な量負荷状態にあると推察される.(2)肺血流が減れば動脈酸素飽和度は低下するが,おもに減るのは酸素運搬に与らない短絡である.肺の換気とガス交換が健常であれば,動脈酸素飽和度の低下は必ずしも全身の低酸素を意味しない.逆に高い動脈酸素飽和度は心肺負荷が大きいことを意味する.(3)「過大な負荷に晒されて心室は余剰エネルギーを発生できない」という仮説を肺/体血流の束縛条件とする.心室の仕事量が一定のとき,肺血管抵抗増加はQp/Qs減,心拍出量減,体血流増,体血圧増をもたらし,肺静脈血酸素飽和度低下に伴う利用可能酸素量の減少を補う効果が認められる. |
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