III-D-6
正常小児期発育過程における大静脈および右室径の変化について—エコー検査からの検討
国立循環器病センター生理機能検査部1),小児循環器科診療部2)
幸山佳津美1),大内秀雄2),橋本修治1),山田 修2)

【背景】小児循環器病領域において右室不全の客観的評価は手術前後の管理を含め重要である.しかし,成長を考慮した小児期の右心系機能評価の基準となる有用な指標は確立されていない.【目的】正常小児の大静脈径とその流速および右室径を計測し,正常小児期発育過程における大静脈サイズと血流動態,右室径の基準値を設定する.【対象】対象は器質的心疾患を認めない小児160例(男82例,女78例),年齢は生後 7 日~23歳11カ月であった.【方法】下大静脈の短,長径,呼吸変動の有無,および呼吸下での最高流速(下大静脈は肝静脈を代用),上大静脈の径,呼吸下での最高流速,および左室短軸断面Mモード法から右室径を測定し,これらと年齢,身長,体表面積との関係を検討した.【結果】下大静脈の短,長径,上大静脈の径と年齢,身長,体表面積の間にはおのおの正相関を認め(r = 0.73~0.84,すべてp < 0.001),呼吸変動は158例中154例(97%)に認めた.下大静脈の最高流速と年齢,身長,体表面積の間には負の相関を認めたが(r = 0.39~0.41,すべてp < 0.001),上大静脈の最高流速は 3 者とも関係を認めなかった.下大静脈の短,長径と下大静脈の最高流速にはおのおの負の相関を認めたが(r = 0.43,0.45すべてp < 0.001),上大静脈の径と上大静脈の最高流速の間には関係を認めなかった.右室径は年齢,身長,体表面積と正相関を示した(r = 0.61~0.66,すべてp < 0.001).【結語】正常小児では,大静脈サイズと血流動態および右室径は成長により変化し,年齢,身長,体表面積と密接に関連し,したがって基準値作成が可能であった.これらの基準値は小児期循環器病領域の心機能,特に右心系の血行動態把握に有用であると考える.

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