9.「生涯先天性心疾患」 
招請講演 Part 1:「老年期の先天性心疾患」
老年期の先天性心疾患
霞が関ビル診療所内科1),東京都老人医療センター病理2)
大川 眞一郎1),千田 宏司2),沢辺 元司2)
過去37年間(1967~2004年)の老年者連続剖検8,5000例中にみられた先天性心疾患は109例(60~104歳,平均年齢80.8歳,男性49例,女性60例)で,頻度は1.3%であった.109例中,二次孔型心房中隔欠損ASDが46例と最多で,欠損孔の大きさが 1cm2以上のASDは17例にみられた.次いで先天性大動脈二尖弁による大動脈弁狭窄ASが19例,僧帽弁前尖裂隙や先天性僧帽弁交連腱策欠如あるいは腱索異常による僧帽弁閉鎖不全MRが13例あった.心室中隔欠損VSD,部分的肺静脈還流異常PAPVR,動脈管開存PDA,心内膜床欠損ECDの不全型が各 4 例,修正大血管転換,Ebstein奇形が各 2 例に認められた.その他,右室二腔症術後,先天性三尖弁閉鎖不全,弁上部肺動脈狭窄症,Discrete型大動脈弁下狭窄など各 1 例がみられた.軽度の各種先天性心奇形としては,VSDの自然閉鎖が15例,冠状動脈の奇形としては冠動静脈瘻 9 例,冠動脈入口部高位61例,単冠動脈や起始異常などが64例あった.弁数異常としては大動脈二尖弁29(AS 19例),大動脈四尖弁 8,肺動脈二尖弁 4,肺動脈四尖弁を35例に認めた.また僧帽弁では,交連腱索欠如を30例(MR 12例),乳頭筋・僧帽弁前尖接合を50例に認めた.静脈系の奇形としては左上大静脈遺残LSVC 13例(1 例は右SVC欠如例),冠静脈洞入口部閉鎖を 4 例認めた.また奇異性塞栓との関係で注目されている卵円孔開存PFOを連続剖検3,000例中の316例(10.5%)に,心房中隔瘤を88例(2.9%)に,またChiari網を286例(9.5%)に認めた.


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