I-B-3
術後25年以上を経過したマスタード手術後症例の現況
兵庫県立尼崎病院心臓センター小児循環器科1),心臓血管外科2)
坂崎尚徳1),佃 和弥1),坂東賢二1),藤原慶一2),大谷成裕2),大野暢久2),長門久雄2),清水和輝2),小田基之2),今井健太2),吉澤康祐2)

【背景】Mustard手術後長期遠隔期には,右室機能障害(RVD),三尖弁閉鎖不全(TR)不整脈が問題となる.当院でマスタード手術を受け生存退院した38例の25年生存率は68%で術後18年以降の死亡例はないが,諸問題で入院する症例は増えてきた.【対象と方法】過去 1 年間に当院を受診したMustard手術後例11例(男性 8 例,最終受診時年齢29~39歳,VSD併存 4 例)の臨床経過を後方視的に調べた.【結果】最終受診時NYHA class 1 が 7 例,class 2 が 4 例,CTR中央値は51%(45~63%),血漿BNP値中央値は37.5pg/ml(15.0~307)であった.ECGでは,mild-moderate sinus node dysfunction例が 3 例であったが,ペースメーカー埋め込みの適応となる症例はなかった.UCGで中等度以上のRVDとTRを認める例が 3 例であった.5 年以内の心臓カテーテル検査は 8 例で行われ,各データの中央値は正常範囲であったが,anaRVEDP ≧ 15mmHg例が 3 例,PAmP ≧ 25mmHg例が 2 例,RVEDV ≧ 150ml例が 2 例,RVEF ≦ 0.5例が 3 例であった.また,25年,30年,35年入院回避率は,それぞれ 0%,70%,50%であった.入院例は 6 例11件で,その原因は,細菌性心内膜炎(1),心不全(3),心房粗動(6),ablation(1)であった.再手術は 1 例で,真菌による心内膜炎に対し肺動脈弁切除術が施行された.【結論】約 7 割の症例が満足できる臨床状況であった.しかしながら,Mustard術後25~30年にかけて,心不全や不整脈に対する内科的治療を要する例が増加しており,注意深い管理が必要となる.

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