I-C-1
川崎病冠動脈障害に起因する心筋梗塞既往患者の予後
国立循環器病センター小児循環器診療部
津田悦子,吉澤弘行,平田拓也,吉敷香菜子,松尾 倫,阿部忠朗,杉山 央,山田 修

【目的】川崎病(KD)による心筋梗塞(MI)既往患者の長期予後をあきらかにする.【対象と方法】KDによる冠動脈障害に起因するMI既往患者61例(男46例,女15例)について診療録から後方視的に検討した.57例においてMI後の心臓カテーテル検査,冠動脈造影,RI心筋血流イメージング(MPI)が施行されていた.左心室駆出率(LVEF)とKaplan-Meier法による初回MIからの生存率,MPIにおける梗塞領域の心筋viabilityの有無と心室性不整脈(2 連発,非持続性心室頻拍,心室頻拍)の回避率との関連についてみた.【結果】初回MIの発症年齢は,3 カ月~33歳 (中央値 2 歳)で,KD発症から16日~27年(中央値 7 カ月)であった.2 回以上のMI既往者は13例であった.初回MIからの最長経過観察期間は32年で, 中央値15年であった.26例(42%)にAMIに対して血栓溶解療法,カテーテル治療(PCI)が施行され,9 例が再灌流に成功していた.MI後23例(40%)に冠動脈バイパス術が施行され,3 例にPCIが施行された.死亡は14例(22%)で,初回MIによる死亡は 3 例(5%)であった.遠隔期死亡は10例で,突然死 5 例,心不全 3 例,心臓移植後 2 例,PCIによる死亡 1 例であった.初回MI後生存率は10年85%,20年79%,30年60%であった.初回MI後の心室性不整脈回避率は10年88%,20年42%,30年15%であった.25年生存率は,LVEF 45%未満(n = 26)の群53%,LVEF 45%以上(n = 31)の群97%に比べ,有意に低下していた(p < 0.01).25年での心室性不整脈回避率は,MI梗塞領域にviabilityのない群(n = 38)は10%,viabilityのある群(n = 20)は100%で,有意差がみられた(p < 0.01).多変量解析では,予後に影響を与える因子は,MI後のLVEF,再灌流の成功,非持続性心室頻拍または心室頻拍の出現であった.【結語】MI後の患者においてLVEF低下があり,梗塞領域にviabilityのない群においては,遠隔期に心室性頻拍の出現がみられ,慎重な経過観察が必要である.

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