I-C-9
無脾症候群の開心術後早期における静注用アミオダロン製剤の使用経験
静岡県立こども病院循環器科1),集中治療科2)
北村則子1),佐藤慶介1),中田雅之1),増本健一1),早田 航1),大崎真樹2),金 成海1),満下紀恵1),新居正基1),田中靖彦1),小野安生1)

【背景】無脾症候群は上室性不整脈を合併することが多く,周術期に治療に難渋することがある.当院では小児へのアミオダロン内服を2000年以降導入し,先天性心疾患に伴う不整脈に使用してきた.2000年以降,術後管理にアミオダロンを使用した手術58例のうち29例(50%)が無脾症候群であり,無脾症候群に対する抗不整脈薬の第一選択とすることが多い.2007年 7 月,アミオダロン静注製剤が認可され,新生児にも静注製剤の使用範囲を広げており,以前までの症例と併せて報告する.【対象】2007年以降に手術介入を行った無脾症候群のうちアミオダロン静注製剤を使用した,11例13件の使用経験をまとめた.【結果】対象不整脈はAT,JETおよび術前の内服継続例.divは5γ持続静注を基本とし必要に応じて増量した.静注期間は中央値 7(3~21)日間.難治例に,3 日間10γ使用した例,一時的に15γまで増量した例があり,この 2 症例は不整脈治療にβblockerも併用した.徐脈,血圧低下を認めたのはβblockerを併用した 1 例のみであった.内服は 5mg/kgを基本とするが10mg/kgを 1 週間程度先行させ,数日divと重複して投与することが多かった.不整脈持続時間は中央値24(0~216)時間.5γ投与下での血中濃度は中央値326(102~803)であり,内服10mg/kg投与時より高い傾向であった.単心室の術直後におけるJR,ATは循環動態への影響が大きく,アンカロンの使用は適正と考えるが,副作用として甲状腺機能低下が多く,チラーヂン内服は6/11例(54%)に上った.新生児例では3/5例(60%)で高年齢群と差はなかった.【考察】アンカロン投与は術後不整脈治療に有効であるが,甲状腺機能低下を半数に認める.アンカロン内服終了後もチラーヂン内服を要することもあり,適応,投与量は慎重を期すべきである.

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