I-C-10
CoA/IAAを呈する低体重児症例に対する外科治療戦略—両側PABの有用性について—
大阪市立総合医療センター小児心臓血管外科1),小児循環器内科2)
川平洋一1),西垣恭一1),前畠慶人1),村上洋介2),江原英治2),鈴木嗣敏2),小澤有希2)

手術時低体重はCoA/IAAの大きなリスクである.今回,2.5kg以下のCoA/IAA症例における外科治療成績を検討した.【症例】1998年以降の10年間に,当センターで外科治療を施行した,手術時体重2.5kg以下のCoA/IAA症例は13例.手術時年齢は 2~35日(平均8.7日),手術時体重は850g~2.4kg(2.0kg)で, 1kg以下は 2 例,1~2kgは 4 例.診断はsimple CoA 1,CoA/IAA + VSD 7,CoA/IAA + 複雑心奇形 5 例.【結果】Simple CoA例は新生児期に,左開胸下に大動脈弓修復(EEDA)を行い,経過は良好.CoA/IAA + VSDの 7 例では,体重1.6~2.4kgの 5 例で新生児期に左開胸下にEEDA + PABを施行,生後 2~8 カ月時にVSD閉鎖を施行し,経過良好.850gと900gの極小未熟児の 2 例では,術前N2を要する心不全やNECを疑わせる不良な全身状態や,狭小な術前大動脈弓(2.3~2.5mm)のため下半身虚血下のEEDAが躊躇され,両側PAB(8~10mm)を生後 6~35日に施行.生後 3~4 カ月時(体重 > 2.5kg)に成長後,EEDAと心内修復を施行した.大動脈弓部は4.5~4.9mmに成長し,比較的安全な修復が可能であった.また,dePAB部の形成は不要であった.CoA/IAA + 複雑心奇形の 5 例(APW 2,UVH 1,DORV 1,AVSD 1)では,初回手術として1.6~2.4kgの 4 例で生後 1~15日にEEDA + PABを施行し,17日~ 2 年後にdefinitive repair(TCPC 1,APW修復 1,DORV修復 1,AVSD修復 1)を施行した.うち,1.6kgのAPW例を術後reCoAで失ったが,他の 3 例は経過良好.1.7kgのIAA + AP windowでは大動脈弓が2.5mmと狭小で,初回手術として両側PAB(9mm)を生後 2 日に施行し,生後 3 カ月時(体重3.6kg)にEEDA + APW修復を施行した.現在,経過良好である.【まとめ】手術時体重2.5kg以下のCoA/IAAに対する外科治療成績は概ね良好であった.1kg以下の極小体重例や術前全身状態不良例や,細い大動脈弓により修復に躊躇する例では初回に両側PABを施行し適度な成長を待つことにより,より安全な大動脈弓修復が可能となると思われた.

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