I-C-12
左心低形成症候群に対する治療戦略—bilateral PA banding後のNorwood with BDGは妥当か?—
長野県立こども病院心臓血管外科1),循環器科2)
梅津健太郎1),原田順和1),坂本貴彦1),井上奈緒2),中野裕介2),田澤星一2),武井黄太2),梶村いちげ2),瀧聞浄宏2),安河内聰2)

【目的】当院では2001年以来, HLHSに対してまずbilateral PA banding(bil. PAB)を行った後に,Norwood手術(N)を行う方法を基本方針としてきた.N時の体―肺動脈シャントの方法につき検討した.【方法】2001年 8 月~2008年10月にbil. PABを行ったHLHS15例を対象とした.原則として,心房間交通にrestrictionがあればBASを行ってからbil. PABを施行し, 4 カ月待機して 4kgに達した症例にはN時にbidirectional Glenn(BDG)を行い,到達困難と判断した症例にはRV-PA shuntを行った.【結果】手術死亡なし,遠隔死亡 1 例.RV-PA群 5 例(bil. PAB時平均体重2,300g,bil. PAB後平均待機期間65日,N時平均体重3,600g),BDG群10例(bil. PAB時2,900g,bil. PAB後113日,N時5,320g).Banding部位に対しては,N時にHegarによるsizingで問題なければdebandingのみとし, 1 例には予防的に術中バルーン拡張を行った.RV-PA群は全例BDGに到達,TCPC到達は 1 例.TCPC待機中は 3 例で, 1 例はBDG後遠隔死.BDG群はTCPC到達 7 例,TCPC待機中 3 例.PAに対する追加治療は,RV-PA群 4 例(BT shunt追加 2 例,PA angioplasty追加 2 例),BDG群 8 例(PA angioplasty 3 例,TCPC時術中バルーン拡張 2 例,カテーテル治療 3 例).TCPC前もしくはBDG後の精査でカテーテル検査を14例に施行しており,TCPC前のPA indexはRV-PA群平均116mm2/m2,BDG群150mm2/m2であった.【考察】bil. PAB後,体重増加を待ってNorwood手術を行う方法はmortalityの低下に貢献した.しかし,体―肺動脈シャントの方法によらずPAに対する追加治療が多く必要であったことは,bil. PAB後の待機期間が長いことが一因であることが示唆された.それでもPA angioplastyやカテーテル治療を行い,内科的治療を併用することで良好なTCPC到達率を得た.【結論】HLHSに対し,bil. PABを行い,体重増加を待ってNorwood with BDGを行うことはmortalityを低下させることができ,かつ良好にTCPC到達し得た.

閉じる