I-C-14
両大血管右室起始を伴う右心型単心室に対する肺動脈絞扼術後の大動脈弁下狭窄の進行
千葉県こども病院心臓血管外科
中村祐希,青木 満,山本 昇,藤原 直

【背景】大動脈が右室から起始する単心室症において肺動脈絞扼術(PAB)後に大動脈弁下狭窄(SAS)が進行することはよく知られていて,ventriculoarterial discordanceを伴う左心型単心室におけるSASの進行はいくつかstudyがされている.一方で両大血管右室起始(DORV)を伴う右心型単心室(SRV)におけるSASの進行はあまり解析がなされていない.【目的】SRV,DORVに対するPAB後のSASの進行の評価.【対象】当施設で1991年 7 月~2008年 5 月に11例のSRV,DORVに対してPABを施行.うちPAB後のフォローが可能な 7 例を対象.PAB施行時年齢は 4~248日(中央値14日),体重は2.4~5.1kg(中央値3.2kg).診断は左側房室弁閉鎖ないし高度狭窄が 4 例(うち 1 例はpolysplenia),double-inlet right ventricleが 2 例,共通房室弁,aspleniaが 1 例.polyspleniaの 1 例は大動脈は一部左室に騎乗,残りの症例はすべて両大血管は完全に右室から起始.SASの診断は心エコーないしカテーテル検査で形態的に判断した.7 例中 5 例はPAB前にSASを認めたが,SASの径は大動脈弁輪径の50%以上あり,PAB施行時にSASの解除は必要ないと判断した.PAB後観察期間は0.6~14.8年(中央値4.3年).【結果】7 例中late deathは 2 例,Fontan手術到達は 2 例,待機中は 3 例.PAB前にSASを認めた 5 例のうち,PAB後に明らかにSASが進行したのは 1 例で, 3 カ月後にDamus-Kaye-Stansel(DKS)を施行,残りの 4 例中 3 例にBDCPA時DKSまたはpalliative Jateneを施行,1 例に 7 カ月後にDKSを施行した.形態的にSASを認めなかった 2 例はフォロー中にSASの進行を認めず, 1 例はFontan手術到達,もう 1 例はBDCPA後Fontan手術待機中であるが,SASに対する外科的介入を必要としなかった.【結語】SRV,DORVは,PAB後にSASが進行してくる可能性は高くはないが,形態的にSASを来しやすい疾患群であり,適切な時期に外科的に介入することでFontan手術に到達できると考えられた.

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