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I-C-17 |
房室錯位症の外科治療成績の検討 |
福岡市立こども病院心臓血管外科
中野俊秀,角 秀秋,檜山和弘,小田晋一郎,櫻井寛久,城尾邦彦 |
【目的】両心室修復術を終了した房室錯位症の手術成績と遠隔期QOLについて術式をもとに検討する.【対象と方法】当院で2008年までに両心室修復術を施行した53例(conventional repair 32例:C群,double switch手術 16例:D群,modified double switch手術 5 例:m-D群).術後平均観察期間はC群11.3年,D群12.2年,m-D群2.7年.累積生存率,術後続発症発生率,心機能の指標を比較検討した.【結果】手術死亡はD群 1 例,遠隔期死亡はC群 3 例に認め,C群の 1 例は術後15年目に心移植を受けた.全体の累積生存率は15年で92.4%で,術式間の差はなかった.再手術(ラステリ術後の導管置換以外)はC群 7 例(うち 4 例は三尖弁置換),D群 3 例(肺静脈狭窄解除)であった.術後合併症は上室性不整脈をC群 2 例(6.3%),D群 5 例(31.3%)に認めた(p = 0.03).ほかに脳梗塞をC,D群 1 例ずつ,血栓弁をC群の 1 例に認めた.m-D群はこれまで再手術,合併症を認めていない.死亡,再手術,合併症を含めた術後続発症の回避率は10年でC群57.8%,D群56.3%であった.血中BNP濃度,運動負荷時の最大酸素消費量(max.VO2)および心エコーでの体心室駆出率(EF)は 3 群間で差はなかったが,m-D群で血中BNP濃度が低く(30.5pg/ml),max.VO2は高い(93.3%N)傾向にあった.C群で術前に 2 度以上の三尖弁閉鎖不全を有する症例では術後の心室機能は低下していた(EF:49.2%,max.VO2:73.7%N).NYHA分類では 2 度がC群,D群 1 例ずつで,ほかは 1 度であった.【結語】(1)中期遠隔成績までの検討では心機能,QOLは良好に保たれており術式間に有意な差を認めなかった.(2)術前に 2 度以上の三尖弁逆流を有するconventional repair症例の術後体心室機能は低い傾向にあった.(3)Double switch手術は心房内血流変換手術に起因する続発症の頻度が多かった.(4)左室機能が良好で,右室または三尖弁に問題がある症例にはmodified double switchは良い適応と考えられた. |
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