I-C-18
当院における肺動脈狭窄または肺動脈閉鎖,心室中隔欠損を伴う修正大血管転位症の治療選択
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学1),心臓血管外科学2),麻酔・蘇生学3)
近藤麻衣子1),大月審一1),岡本吉生1),大野直幹1),栗田佳彦1),栄徳隆裕1),森島恒雄1),佐野俊二2),笠原真悟2),岩崎達雄3),戸田雄一郎3)

【目的】PS/PA + VSDを伴うl-TGAに対して修復術を施行した症例の治療選択について考察する.【対象】1995~2008年で当院にて上記と診断した25例.年齢:1 歳 7 カ月~46歳 1 カ月(中央値 5 歳11カ月),体重:7.1~53kg(中央値16.5kg).【方法】術式を決定し得る要素(1)年齢(2)体重(3)RV volume(4)LV volume(5)PA index(6)左室流出路径(7)IVSからAoまで(パッチ閉鎖部分)の距離を後方視的に検討.【結果】修復術の内訳は,double switch(DS)術(Senning + Rastelli)(D群):10/25例(40%),Fontan術(F群):12/25例(48%),conventional repair:3/25例(12%)で,死亡例:4 例(16%)(DS術後 3 例,Fontan術 1 例)であった.(1)D群:2 歳 5 カ月~35歳 2 カ月(中央値 5 歳 0 カ月),F群:1 歳 7 カ月~19歳 1 カ月(中央値 4 歳 1 カ月)で有意差はなかった.(2)D群:7.1~47.5kg(中央値15.0kg),F群8.5~53.0kg(中央値15.0kg)で有意差はなかった.(3)D群全例のRV volumeは136 ± 24%,術後のRV volumeを仮想したものは106 ± 16%で,100%以下は全例D群死亡例であった.(4)D群のLV volumeは141 ± 26%で,生存例と死亡例で有意差はなかった.(5)D群のPA indexは451 ± 102mm2であり,D群死亡例では全例400mm2以下であった.(6)D群の左室流出路径(LVDTへ張り出すinfudibular septumがある場合は切除した最狭部径)はAoV正常値の93 ± 7.0%で,生存例と死亡例の有意差はなかった.(7)20kg以下のD群生存例の全例でIVSからAoまでの距離は25mm以下であり,それ以上ではD群の死亡例またはF群であった.D群生存例で 1 例のみDS術時22kgで距離31mmの症例があった.【考察】本疾患にDS術を選択するにあたり,特に左室流出路再建に関してはVSDの解剖学的検討やパッチ閉鎖した際の流出路形態の検討だけでなく,IVSからAoまでの距離についても考慮する必要がある.また,左心系だけでなく右心系(右室容量や肺動脈発達度)に対する検討をすることもDS術選択において重要であると考えられる.

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