I-C-19
AVDに対するdouble switch operation/遠隔成績と術後のmorbidity低減のための術式選択
国立循環器病センター心臓血管外科1),小児循環器診療部2)
齋藤友宏1),鍵崎康治1),萩野生男1),平 将生1),白石 公2),八木原俊克1)

【目的】当施設では解剖学的左室を体循環に用いることの優位性をその理論的根拠とし,房室錯位(AVD)に対して解剖学的二心室修復術:Double switch operation(DSO)を第一選択としてきた.DSOの長期遠隔成績と術後QOL向上のための術式を検討した.【対象と方法】1987年以降,当施設で二心室修復を施行したAVD72例のうち,DSOを施行したのは52例(72%)であった.PA/PSを有する(PA/PS群)44例の手術時平均年齢は5.1歳,PSのない(PS(−)群) 8 例では2.5歳であった.PA/PS群のうち27例は心外導管を使用(conduit repair:CR),17例は心外導管非使用(non-conduit repair:NCR)であった.心房内血流転換はMustard(M) 36例,Senning(S) 16例.狭小VSDに対しては 6 例でVSD拡大,7 例に付加的大動脈肺動脈吻合:AAPAを併用した.【結果】術後観察期間は17カ月から19年.累積生存率は 5 年80%,10年78%であったが,1995年以降では 5 年生存率95%と良好であった.DSO後の右室流出路に対するintervention回避率はCRで 5 年100%,10年71%,NCRでは 5 年,10年とも100%であった.心房スイッチではM群のうち,10例で体静脈への再治療を要したが,S群ではPVOに対する再手術 1 例のみであった.intervention回避率(5 年/10年)はM群で75/60%,S群で88/88%であった.体心室のEDV(% of normal),EF(%)はそれぞれ 5 年で113 ± 28,56 ± 11,10年で116 ± 51,54 ± 10,15年超の 3 例は平均EF 61%と遠隔期においても良好であった.VSD拡大はLV機能に懸念を有するが,術後50%未満のEFを呈した症例はVSD拡大例で67%,AAPA併用例で14%であった.DSO術後10年超の19例で,18歳以上の14例では12例が就労・就学,内服継続が 5 例,治療を要する不整脈は 4 例に認めた.【考察】DSOは遠隔期においても体心室機能は良好で,心外導管を用いない右室流出路再建,Senningによる心房スイッチ,狭小VSDに対するAAPAの併用により術後のmorbidityはさらに低減することが可能と考えられた. 4.「新生児開心姑息術における治療成績向上の工夫と児の成長・発達」

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