I-C-20
新生児Ebstein奇形に対する右室縫縮を中心としたStarnes手術変法
社会保険中京病院心臓血管外科1),小児循環器科2)
櫻井 一1),加藤紀之1),野中利通1),杉浦純也1),波多野友紀1),野田 怜1),松島正氣1,2),大橋直樹2),西川 浩2),久保田勤也2),吉田修一朗2)

【目的】新生児Ebstein奇形に対するStarnes手術で,当院では右室を切除せず縫縮を中心とする術式に変更して成績が安定したため,以前の症例と比較しその有用性と問題点を検討した.【方法】対象は,1996~2008年の13年間に当院で 3 カ月未満で手術介入し,一期または二期でStarnes手術を行った 9 例とし,旧術式の2007年以前の前期 5 例と,現術式とした以後の後期 4 例に分け比較した.前期例中 3 例で右室はそのままで三尖弁閉鎖のみ,2 例で右室切除した.後期 4 例は右室は切除せずできるだけ縫縮し三尖弁はパッチ閉鎖した.前後期それぞれ,手術時日齢:41 ± 28,16 ± 22日,体重:3.0 ± 0.6,2.8 ± 0.5kgであった.現術式の要点は,右室は切除せず心停止中に右室内から心外へ,流出路,心尖部,下面基部に針糸を刺出し,この三角形内を大動脈遮断解除後に縫縮.三尖弁は弁口面積の1/4を目標に2.7mm孔付きEPTFEパッチで縫縮し閉鎖.この際併存するKent束を遮断できるよう密に縫合.刺激伝導系部位は遺残三尖弁組織に縫合.術中あるいは術後UCGで左室壁の動きと残存右室腔の大きさを見ながら,必要なら右室縫縮を心拍動下に追加,である.術後は,心拍出量の増加につれ血中乳酸値に改善,SpO2の低下がでてきたところで,1~2 段階かけshunt graftのclipを緩め,除去し,二期的に胸骨を閉鎖した.【結果】入院死亡は前期 4 例(80.0%),後期 1 例(25.0%)で,死因はすべて心不全に基づくものであった. 【結語】本術式の利点としては,大動脈遮断時間が短縮できる,出血が少ない,心拍動下,場合によっては閉胸前ならICUでも右室を追加縫縮できる,UCGで観察しながら改善が確認できる,冠動脈の屈曲を来しにくく生じてもすぐに分かることである.欠点としては,切除に比べると右室腔が残りやすいこと,縫縮した右室心筋が虚血になり不整脈源となる可能性があり得ることである.本術式により成績の改善がみられ有用と考えられた.

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