I-C-21
新生児期開心術,特に機能的単心室症に対する姑息術の現状と問題点
榊原記念病院外科
安藤 誠,高橋幸宏,和田直樹,椛沢政司

【目的】近年,新生児開心術の成績は飛躍的に改善されている.当科における新生児期開心術,特に機能的単心室に対する姑息術の現況と今後の問題点につき検討した.【方法】2004年 1 月~2008年12月に新生児期開心術を施行した190例につき検討.HLHS/類縁疾患44例,大動脈スイッチ(ASO)42例,arch repair ± VSD閉鎖29例,nonisomeric TAPVC 23例,ASO + arch repair 13例,単心室に対するその他姑息術(SV palliation)13例,isomeric TAPVC 12例,二心室修復を目的とした姑息術(BVR palliation) 7 例,truncus 4 例,その他 4 例であった.【成績】3 年生存率は二心室修復群(ASO,arch repair ± VSD,truncus, BVR palliation)で100%,ASO + arch repairで76.9 ± 11.7%,単心室に対する姑息術(HLHS,SV palliation,isomeric TAPVC)でおのおの62.2 ± 7.9%,62.5 ± 15.5%,48.6 ± 14.8%と危険度が概ね 3 群に分別可能であった.以下,第 3 群 = 単心室に対する姑息術につき検討した.1 年以内死亡は21例.解剖学的に修復が困難であった 6 例(MS/AA + coronary sinusoidal communication 2 例,severe AVVR 2 例,mixed TAPVR + small confluence 2 例),染色体異常 + 全身多発奇形 3 例,不可逆性閉塞性肺血管病変 3 例.以上12例はinoperableと考えられた.5 例は手術戦略/管理に反省を要した例(small LVでBVRよりSVR trackに変更した 3 例,Valsalva血栓症 1 例,non-confluent PA/SVに対するシャント後のhigh flow 1 例)であり,残り 5 例は原因を特定することができなかった.【結論】新生児開心術において,BVR症例の中隔期生存は肺血管異常を伴うTAPVR症例およびASO + arch repairをのぞき100%であった.一方単心室に対する姑息術,特にisomeric TAPVC症例では依然課題を残す.急性期死亡の半数はinoperableと判断されるべき症例であったが,残りの症例においては戦略/診断の改善によりさらなる向上が期待できる.

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