I-C-22
左心低形成症候群における両側肺動脈絞扼術後の肺血流動態での次回術式の決定
社会保険中京病院小児循環器科1),心臓血管外科2)
西川 浩1),大橋直樹1),久保田勤也1),吉田修一朗1),松島正氣1),櫻井 一2),水谷真一2),加藤紀之2),野中利通2),杉浦純也2),波多野友紀2)

【背景】左心低形成症候群(variantを含み,以下,HLHS)の両側肺動脈絞扼術(以下,BPAB)は新生児期開心姑息術の回避により短期救命率に貢献し,当院でも導入してきた.しかし,その調節範囲は狭く,術前,術中の因子に影響を受け,術後肺血流は必ずしも安定しない.また,次回手術として2007年まではNorwood型手術(No術)を,2008年よりNorwood Glenn手術(NG術)を待機する傾向にあるがいまだ明確な決定基準はない.【目的】BPAB後の肺血流状態や付随する問題点からnext stageへの介入法を決定するBPAB後strategyを検討すること.【対象および方法】2003年 2 月以降,HLHS全例にBPABを採用.対象は連続15例,後方視的に診療録を検討.性別は男13例,女 2 例.HLH variantは 3 例.両側上大静脈(BSVC)例が 3 例,肺静脈閉鎖例はない.術前mild以上の房室弁逆流を 2 例に認めた.胎児診断されてない 6 例中 3 例がductal shockで搬送.BPAB時日齢 4 ± 2,手術時体重2.8 ± 0.4kg.BPABは術中心エコーでの左右肺動脈流速3.5m/s前後,動脈血酸素分圧などを参考に決定.【結果】BPAB後,症状のある高肺血流(hi群)が 3 例,低肺血流(lo群) 5 例.PAB調節は 5 例,13 ± 5 日で必要とし,2006年以前の症例である.調節はhi群 2 例,lo群 3 例に施行.このうち,2 例が死亡.次回手術までの死亡は 4 例(うち 2 例はductal shock例),次回手術はNo術 6 例,手術日齢32 ± 18,NG術 5 例,手術日齢94 ± 10.動脈管狭窄は 2 例,それぞれNo術,ステント留置施行した.【考察】最近,BPAB後に外科的調節を要しないが,依然,hi群,lo群は存在する.hi群は肺血管床が発達していると考え,NG術を前提として厳重な心不全の管理をしていく.動脈管狭窄例はステント留置を考慮しhi群に準ずる.BSVCはそれぞれが細く早期NG術のリスクと思われた.lo群では重度チアノーゼでの待機の回避と肺血管の発育を目指すべく早めにNo術を目指す.Ductal shock例は予後不良であった.

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