I-C-23
新生児Ebstein奇形とその類縁疾患の治療成績向上の工夫と児の成長・発達
長野県立こども病院心臓血管外科1),循環器科2)
坂本貴彦1),原田順和1),梅津健太郎1),松下 弘1),安河内聰2),瀧聞浄宏2),梶村いちげ2),武井黄太2),井上奈緒2),田澤星一2),中野裕介2)

【はじめに】新生児期開心姑息術の成績は以前満足のいくものではなく,また遠隔期の児の成長・発達まで言及した報告は皆無に等しい.両側肺動脈絞扼術はHLHS等には有効な術式であるが,TAPVCを合併したaspleniaや新生児Ebstein奇形は新生児期開心姑息術が必須である.今回,新生児Ebstein奇形とその類縁疾患に対する新生児期開心姑息術の成績を検討した.【対象】1993年 5 月の開院から2008年12月の間に当院にて経験した新生児Ebstein奇形とその類縁疾患 8 例(男 5 例,女 3 例)を対象とした.肺動脈閉鎖(PA) 5 例,肺動脈狭窄(PS) 3 例で,7 例が胎児診断例であった.手術時年齢:5~13日(中央値 6 日),体重:2,400~3,268g(3,135g),術直前CTR:82~100%(95%)であった.【結果】全例,modified Starnes手術を施行した.原則として三尖弁はpunched outしたXenomedica patchにて閉鎖し,右心室自由壁を切除した.肺血流はPSの 3 例にmPA結紮もしくは肺動脈弁閉鎖を施行し,6 例はBT shunt,2 例でPDA開存により調節した.体外循環時間100~166分(138分),大動脈遮断時間26~63(38分)で,平均4.2日で 2 期的閉胸,13.3日で人工呼吸器から離脱した.術後CTRは52~68%(64%)へと著しく改善した.急性期死亡は 2 例(ともに出生後搬送例)で,死因は上室性不整脈,術前ショック例の膵壊死であった.遠隔死亡は 1 例で術後 3 カ月目の突然死であった.母体搬送の 5 例が現在遠隔生存しており,うち 2 例がTCPCに到達しTCPC待機 1 例,BDG待機 2 例である.TCPC到達の 1 例に難聴を認めるが,他の 4 例は術後頭部MRI,ABR,脳波および成長発達に問題はない.一方,2 例に右室内血栓を認め現在warfarization中である.【結語】胎児診断,母体搬送により安定した術前呼吸循環管理が可能となり,Starnes手術の成績は著しい向上を認めた.本シリーズでは児の成長発達に大きな問題を認めていないが,右室内血栓など新たな問題点も出現し,今後の検討課題である.

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