I-C-24
左心低形成症候群に対するRV-PA shuntを用いたNorwood手術の新戦略—肺血流制御目的の金属クリップを用いたハイブリッド治療—
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科学1),小児医科学2)
笠原真悟1),小谷恭弘1),新井禎彦1),藤井泰宏1),海老島宏典1),大野直幹2),岡本吉生2),大月審一2),佐野俊二1)

【はじめに】Norwood手術において適切な肺―体血流比を得ることは,肺血管抵抗が不安定な新生児期での手術のため極めて難しく,さらには成長に伴う肺血流の相対的低下は,より早期の第 2 期手術を選択しなければならなくなる.最近われわれは肺血流路としてのRV-PA shuntに,より至適な肺血流確保の目的で金属クリップを用いたハイブリッド治療を積極的に取り入れている.【対象】73例のRV-PA shuntを用いたNorwood手術のうち,2005年以降 9 症例に肺血流制御目的の金属クリップを用いた.対象症例の選択は以下の条件を満たすものとした.(1)術後SaO2が85%以上,(2)術後腹膜透析の併用もしくは混合静脈血酸素飽和度55%以下の低心拍出量.【方法】RV-PA shuntは 5mmのPTFEを用いれば再狭窄率は低い.術直後は肺血管抵抗が上昇しているため,体重が 3kg未満の症例であっても金属クリップが必要な場合は少ない.通常開胸のまま術後管理を行っており,この管理中に体循環,肺循環の安定が得られるとともに徐々にSaO2の上昇が認められる症例が多い.平均術後 3 日の二期的胸骨閉鎖時にSaO2が75~80%になるように 1~3 個の金属クリップを用い,RV-PA shuntに狭窄を作成し,肺血流制御を行った.またSaO2低下時にバルーンカテーテルを用いた金属クリップの遊離を行った.【結果】9 例中 5 例が成長に伴うチアノーゼの進行により,Norwood手術後平均5.5 ± 0.4(4~6 カ月)にバルーンカテーテルによるRV-PA shuntの拡張と金属クリップの遊離を必要とした.これにより循環動態の悪化なくSaO2は78.1 ± 1%から86.3 ± 3%に上昇し,第 2 期手術を待機することができた.【考察】この方法で肺―体血流比の不安定な新生児期のNorwood手術の術後管理が安定し,またバルーン拡張による金属クリップの遊離で,成長に伴う相対的肺血流の低下に伴うSaO2の低下に対応でき,第 2 期手術が計画的に行うことが可能であった.

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