I-D-10
先天性心疾患における心不全マーカーとしての赤血球粒度分布幅RDWの検討
千葉県こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
建部俊介1),中島弘道1),脇口定衞1),江畑亮太1),青墳裕之1),中村祐希2),山本 昇2),青木 満2),藤原 直2)

【背景と目的】近年,成人領域において赤血球粒度分布幅RDWが,心不全あるいは冠動脈疾患の独立した予後規定因子であることが示された.【目的】CHD児の心不全マーカーとして,RDWの有用性を検討した.【方法】2007~2008年に心カテ検査を施行した症例で,RDWに影響を与える新生児,術後(輸血後) < 4mおよびチアノーゼ症例を除いた連続85例を対象とした.後方視的に心不全症状(含むRoss/NYHA分類),貧血,生化学検査,BNP/HANP,腎機能(Schwarz法補正推定GFR),自律神経機能(ホルターECGによる心拍変動),心カテによる血行動態指標,心不全治療薬についてRDW-CV値(Sysmex XE-2100)との相関を調べた.【結果】対象の年齢平均6.4歳(0.5~17),ICR後63%(TCPC後 5%).Ross/NYHA 2度以上17%,貧血の合併11%(小球性 5%),平均推定GFR 107.7ml/分/1.73m2(51.4~188.5).2 変量解析では,Ross/NYHA(r2 = 0.47),logBNP(r2 = 0.34),房室弁逆流(r2 = 0.35),PVR(r2 = 0.37),および鉄剤内服(r2 = 0.3)との間で有意な相関を示した.またBSA,尿酸,血清Na,推定GFR,体心室EDP,心拍変動のLF,内服薬(利尿剤,ACE阻害薬,肺血管拡張薬)とRDWの間に弱い相関が認められた.重回帰分析ではlogBNP,PVR,鉄剤の内服によりR2 = 0.6を得た.【結語】チアノーゼのないCHD症例で,RDWは他の心不全指標との間に相関が認められた.小児においてもRDWは心不全の病態把握,重症度評価や予後予測に使用できる可能性があると考えた.

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