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I-E-2 |
先天性心疾患を伴ったDown症候群の肺高血圧に対する低換気の影響 |
大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科1),心臓血管外科2)
濱道裕二1),石井 良1),門田 茜1),塩野展子1),前川 周1),河津由紀子1),稲村 昇1),萱谷 太1),盤井成光2),川田博昭2),岸本英文2) |
【背景】Down症候群に先天性心疾患を合併した場合は,低換気による肺高血圧の増悪が問題となる.しかしDown症候群でない場合に比べて低換気がどれほど強く肺高血圧に影響を及ぼすかは明らかではない.【目的】肺血流増加型の先天性心疾患を合併したDown症候群において,低換気による肺高血圧への影響の程度を検討.【対象と方法】対象は1993~2008年の間に静脈麻酔のみで心臓カテーテル検査を施行した未手術のVSD,CAVC,PDA,ASDのDown症候群56人(Down群).年齢は12カ月未満.対照は同様の条件の131人(nonDown群).後方視的に検討.平均肺動脈血圧(mPA)が55mmHg以上を重症肺高血圧と定義.動脈血液ガスにおける二酸化炭素分圧(PCO2)が46mmHg以上を低換気と定義.重症肺高血圧に関与する因子を単解析,次いで多重ロジスティック回帰分析で求めた.【結果】Down群,nonDown群いずれにおいても,疾患の種類,検査時月齢は関与しなかった.Down群では,重症肺高血圧に有意に関与した因子は低換気と左房圧の上昇の 2 因子.PCO2が46mmHg以上の低換気(48 ± 2mmHg)は,オッズ比15.6倍.左房圧の 8mmHg以上の上昇は,オッズ比5.3倍.このモデルのR2の値は0.42で,重症肺高血圧の有無の42%はこれら 2 因子で決定できた.nonDown群でも重症肺高血圧の有無に関与するのは,これら 2 因子.しかし関与するPCO2値は56mmHg以上と上昇.またR2は0.12と低下し,低換気と左房圧の上昇を独立因子とするモデルでは重症肺高血圧の有無の12%しか決めることができなかった.【結論】Down症候群で肺血流増加型の先天性心疾患を合併した場合は,Down症候群でない場合に比べ重症肺高血圧の原因のかなりの部分を低換気が占めることが示唆される.またDown症候群では低換気が高度でなくとも,重症肺高血圧が惹起される可能性がある. |
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