I-E-3
Jacobsen症候群に合併した左心低形成症候群の 6 症例
東京大学医学部小児科1),心臓外科2)
豊田彰史1),小野 博1),中村嘉宏1),香取竜生1),村上 新2)

【背景】Jacobsen症候群(JBS)は10万人に 1 人以下と非常にまれな染色体異常疾患である.特徴的な顔貌に加え,合併症として左心低形成症候群(HLHS)や血小板減少症が存在することが知られている.一方,HLHSに血小板減少症を合併した症例を検討した報告はない.【目的】HLHSに血小板減少症を合併した症例について検討する.【対象】2001年12月~2008年12月の間に当院で加療した新生児HLHS症例のうち,血小板減少(血小板数 < 10万/μl)を来した症例.【結果】期間内に当院で加療したHLHS患者27症例中, 6 症例(22%)で新生児期に血小板減少を認めた.いずれも感染や血液疾患等血小板減少を来す原疾患は否定され,凝固・線溶系の異常も認められず特発性と考えられた.血小板数は2.2~8.9万/μl(4.8 ± 2.4万/μl)まで低下し,出血リスクを回避するため手術時全例血小板輸血が施行されたが,実際に出血性病変を来した症例はなかった.4 症例については,染色体検査が施行され,いずれも11番染色体長腕遠位部欠損を認めた.特徴的な特異顔貌(眼間離開・眼瞼下垂など),眼科疾患,尿生殖器異常,消化器異常等を合併し,成長した症例では精神運動発達障害を認めた.【考察】HLHSに新生児血小板減少症を合併する症例は比較的多く,JBSが強く疑われることから,染色体検査が推奨される.JBSは11番染色体長腕遠位部欠損を認め,11q23.3(FRA11B)からテロメアまでの欠損領域の長さにより表現型が異なるが,HLHSや血小板減少症を合併することから,同領域に左心系形成および血小板形成にかかわる重要な遺伝子が存在することが示唆される.血小板減少症については,対症療法的に血小板輸血を施行することで出血リスクを軽減でき,JBSの生命予後は心疾患および併発先天奇形の重症度に依存すると考えられる.

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