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I-E-6 |
小児期心疾患に対する抗血小板薬ticlopidineの有用性と問題点について |
埼玉県立小児医療センター循環器科
小川 潔,伊藤怜司,河内貞貴,菅本健司,菱谷 隆,星野健司 |
【目的】短絡術後やフォンタン手術後,川崎病後遺症の冠動脈瘤など小児期に血栓予防を必要とする疾患は少なくないが,どの薬剤が最適なのかいまだ確立されていない.成人領域では抗血小板薬の有用性が確認され,米国ではclopidogrelの使用が推奨されている.最近clopidogrelの小児薬用量が報告され,今後小児においても使用が増加すると推察される.Ticlopidineはclopidogrelと同様に血小板表面に存在するADP受容体の一つであるP2Y12受容体の阻害薬で,TTPや汎血球減少などの副作用が指摘されている.Ticlopidineは適応症が広いが小児の投与量についての検討はない.Ticlopidineの至適投与量,有効性,副作用について検討した.【方法】対象は短絡手術後や川崎病後冠動脈瘤,フォンタン手術後などの小児90例.年齢により乳児群(0~2 歳):30例,幼児群(2~7 歳):30例,学童群(7~15歳):30例の 3 群に分類した.体重当たりの投与量とADP添加血小板凝集能との相関を検討した.採血は1,042回, 1 人当たり平均11.6回.【成績】Ticlopidineの投与量は 1~7.4mg/kgで,血小板凝集能は 2%から74%であった. 2 回以上連続して血小板凝集能が20%を下回ったのは19回であったが,症状を伴ったことはなかった.各年齢群ともに体重当たりの投与量と血小板凝集能との間に相関関係は認められなかった.投与中に血栓形成が合併した例はなかった.副作用としてTTPや汎血球減少,重篤な出血は認められなかったが,投与開始 3 年以上経過してから血小板数が10万前後となった例が 2 例認められた.また,投与開始 7 年後血小板数が増加し,150万となった例が 1 例あった.【結論】小児においてticlopidineは有効かつ安全であると考えられた.投与量については個人差が大きく,有効な投与量の幅も広かった.このことが,clopidogrelの推奨投与量について報告者によって大きく異なる理由と考えられた.血小板凝集能を確認しながら投与量を増減する必要がある. |
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