I-E-13
母体へのレチノイン酸投与によるDiGeorge症候群モデルマウスにおける流出路および臓側中胚葉における遺伝子発現の検討
国立循環器病センター小児循環器診療部1),東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート2),国立成育医療センター薬剤治療研究部3)
白石 公1),森島正恵2),三部 篤3)

【背景】われわれはこれまでに妊娠マウスにビタミンA誘導体(レチノイン酸)を投与すると妊娠6.5日から10.5日にかけて内臓錯位症候群,共通房室弁,左心低形成,完全大血管転位,両大血管右室起始,総動脈幹症,ファロー四徴症,肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損,大動脈弓奇形まで幅広いスペクトラムの心奇形が発症することを報告した.とりわけ胎生9.5日では総動脈幹遺残,大動脈―肺動脈窓,ファロー四徴症,肺動脈閉鎖,大動脈離断などの心大血管系の異常とともに,胸腺低形成,口蓋裂,兎唇など,ヒトDiGeorge症候群に類似した奇形が発症することが特徴的であった.これらの形態形成異常に関与する遺伝子を明らかにする目的でなされたDNAマイクロアレイの結果から,発現量に変化がみられたTbx1,myocardin,doublecortinについてリアルタイムPCRにより定量評価した.【方法】 ICRマウス妊娠9.5日齢にレチノイン酸70mg/kgを腹腔内投与し,妊娠10.5日に母体より胎仔を摘出した.実態顕微鏡下に80~100個の胎仔より心臓流出路と内臓中胚葉―咽頭弓組織を摘出し,RNAを抽出してreal-time PCRにより定量評価した.【結果】Tbx1は内臓中胚葉―咽頭弓組織(内胚葉を含む)で高い発現がみられ,この部分ではRA投与群は対照群に比べて発現が低下(0.67倍)した.一方myocardinは主に心臓流出路で高い発現がみられ,この部分ではRA投与群では対照群に比べてわずかに発現が亢進(1.19倍)した.Doublecortinは主に内臓中胚葉―咽頭弓組織で高い発現がみられ,RA投与群では対照群に比べてわずかに発現が低下(0.90倍)した.【結語】初期の心臓形態形成に重要な役割を演じるTbx1とmyocardinは,心臓流出路と内臓中胚葉―咽頭弓組織で特徴的な発現パターンがあり母体へのRA投与により胎仔の発現量に変化がみられた.今回定量的に差がみられたdoublecortinは,二次心臓領域や神経堤細胞の移動に関連するかについて今後検討を加える予定である.

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