I-E-16
三次元超音波による左心低形成症候群における三尖弁閉鎖不全症の原因解析
順天堂大学医学部小児科1),アルバータ大学医学工学2),医学部小児科3)
高橋 健1),Richard Thompson2),稲毛章郎3),Jeffrey Smallhorn3),根岸佳慧1),大高正雄1),佐藤圭子1),大槻将弘1),秋元かつみ1),稀代雅彦1),清水俊明1)

【背景】左心低形成症候群(HLHS)に合併する三尖弁閉鎖不全症(TR)は患者の予後に大きな影響を与えるが,発生機序は明らかではない.【目的】TR重症度に影響を及ぼす因子を三次元超音波で解析した.【方法】35例のHLHS患者(年齢:1.0歳~10.0歳,ノルウッド術後10例,グレン術後12例,フォンタン術後13例)に対しPhilips iE33を用いて三次元超音波を施行した.TomTec system上で,三尖弁弁輪,弁表面および乳頭筋の位置を(x,y,z)コードに変換し,独自のプログラムにより弁輪面積と形態,弁逸脱(prolapse)と弁の心尖部方向へ陥凹した部位(tethering)の体積,乳頭筋の位置を測定・評価した.【結果】7 例がprolapse(group P:全例重症TR)を,12例がtethering(group T: 7 例が重症TR)を認め,16例はどちらも認めなかった(group N: 3 例が重症TR).グループ間の比較で,(1)弁輪面積はgroup Nよりgroup Pで大きく(p < 0.01),(2)乳頭筋側方移動はgroup Nよりgroup Tで大きく(p < 0.05),(3)group Tの弁輪はgroup Pより平坦であった(p < 0.01).多変量解析によると,(1)右室の横径/長径比,prolapseの体積,prolapseとtetheringの合計体積がTR重症度の,(2)弁輪面積と年齢がprolapse volumeの,(3)乳頭筋側方移動がtethering volumeの独立変数であった.【結論】心室横径の拡張,三尖弁のprolapseおよびtetheringがTR重症度に関与していた.加齢と弁輪拡張がprolapseの,乳頭筋の側方移動がtetheringの原因となり得た.これらの結果は,HLHS患者を治療・管理するうえで,極めて重要な情報と考えられた.

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