I-E-17
三次元超音波による房室中隔欠損症における左側房室弁閉鎖不全症の原因解析
順天堂大学医学部小児科1),アルバータ大学医学工学2),医学部小児科3)
高橋 健1),Richard Thompson2),稲毛章郎3),Jeffrey Smallhorn3),根岸佳慧1),大高正雄1),佐藤圭子1),大槻将弘1),秋元かつみ1),稀代雅彦1),清水俊明1)

【背景】房室中隔欠損症(AVSD)に合併する左側房室弁閉鎖不全症(LAVVR)は患者の予後に大きな影響を与えるが,その発生機序は明らかとはなっていない.【目的】LAVVR重症度に影響を及ぼす因子を三次元超音波を用い解析した.【方法】対象は不完全型28例,完全型31例,計59例(根治術後52例)のAVSD患者で,年齢3.3歳~32.6歳,男:女 = 32:27.Philips iE33およびX3-1もしくはX7-2プローブを用い三次元超音波を施行した.TomTec systemを用い,LAVV弁輪上の30カ所,弁表面の56カ所,乳頭筋基部および先端の位置を(x,y,z)コードに変換して記録し,独自のプログラムで弁輪面積,弁逸脱(prolapse)および弁の心尖部方向へ陥凹した部位(tethering)の体積,乳頭筋の位置を測定した.弁尖や交連の形態異常を3Dデータの再構築により評価した.【結果】28例は軽度の(group 1),31例は重度の(group 2)LAVVRを認めた.Group間の比較の主な結果は次の通りである.(1)共通後尖の形態異常はgroup 1よりgroup 2 に多い(p < 0.01).(2)共通後尖とmural leaflet間の交連の異常はgroup 1よりgroup 2に多い(p < 0.01).(3)弁輪面積はgroup 1よりgroup 2 が大きい(p < 0.01).(4)前乳頭筋の側方移動はgroup 1よりgroup 2 で大きい(p < 0.01).多変量解析では,左室の横径/長径比,弁輪面積,前乳頭筋の側方移動,年齢がLAVVR重症度の独立因子である.【結論】AVSDにおけるLAVVRは,弁輪面積の拡張,心室の横径の増加に伴う乳頭筋の側方への移動,加齢に伴って悪化した.これらの結果は,AVSD患者を治療・管理するうえで,極めて重要な情報となり得ると考えられた.

閉じる