I-E-20
64列MD-CTによる新生児完全大血管転位の冠動脈評価の検討
北海道立子ども総合医療・療育センター循環器科
畠山欣也,春日亜衣,阿部なお美,高室基樹,横澤正人

【背景】新生児期の完全大血管転位(以下,TGA)における大動脈スイッチ術の際,冠動脈の走行は重要である.そのため,術前に心臓超音波検査およびLaid-back法などによる冠動脈造影が施行されるが,しばしばその走行の診断に苦慮する.近年,画像機器診断の発達によりMD-CTによる本疾患の冠動脈の評価に有用だとする報告が散見する.【目的】今回,われわれは,4 例のTGAに対してMD-CTを施行し,冠動脈の走行を評価し良好な結果を得られた.その方法などについて検討する.【方法】全例,麻酔科に依頼し,気管内挿管下全身麻酔にて施行.撮影の際には,呼吸停止下で施行した.心拍数を下降させるためのβブロッカーは使用しなかった.撮影は,Aquilion 64(東芝社製),得られた画像はZaiostation system 610 Version 1.17J(Zaiosoft,Inc.)で評価した.【結果】MD-CT施行時の日齢 5~16日(平均 9)は,体重は,2,020g~2,898g(平均2,584g)であった.全例冠動脈の描出は良好で,走行パターンは 3 例がShaherの 1 型で 1 例が2aのintermuralタイプであった.MD-CT施行による合併症は全例認めなかった.【考案】MD-CTによる画像診断は近年,小児循環器領域でも欠かせないものとなっている.しかし,造影剤や被曝など今後も考えなければならない問題を有しているのが現実である.特に新生児の場合,心拍数や画像の精度など課題も多く撮影方法は経験則に基づくところが大きい.【まとめ】新生児の完全大血管転位の冠動脈評価にMD-CTは有用であると考える.今後もその撮影法に関して症例を重ね検討していく予定である.

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