I-E-21
MDCTを用いたtotal pulmonary vascular volumeの計測―肺血管床の新しい定量的評価法―
東京慈恵会医科大学附属病院心臓外科
山城理仁,森田紀代造,宇野吉雅,篠原 玄,橋本和弘

【目的】先天性心疾患の手術治療において,肺血管の発育状況は手術適応の有無に限らず,術後のQOLを左右する重要な要因の一つである.現在用いられているNakata indexは左右肺動脈の第一分岐直前の肺動脈の径から肺血管床の発育を推察するものであった.しかし,この方法では必ずしも肺血管全体の大きさを反映しない可能性がある.今回,MDCTを用いてより末梢の肺動脈を含むtotal pulmonary vascular volume(TPVV)を計測し,さらに正確な肺血管の計測法を検討した.【対象と方法】対象は肺血管床および肺実質が正常と思われる非肺疾患および非心臓疾患の10例(性比 5:5,平均年齢30 ± 2.6歳,平均身長167 ± 2.6cm,平均体重58.6 ± 4.1kg,平均BSA 1.65 ± 0.06m2,PAI 306 ± 25.7)に対して施行された造影CTを基に,年齢,性別,身長,体重,BSA,PAI,total lung capacity,TPVVを計測した.撮影にはSIEMENS社製Sensatiion 16および,Emotion 16を用い,5mm sliceのCT像を作成した.測定にはSIEMENS社製SyngoMMWP VE31Aを使用し,作成した横断面から全肺輪郭をtraceし,CT値をlower limit-700に設定することでtotal lung volume(TLV)とTPVV(cm3)を測定した.【結果】対象例のTLVは3,478 ± 260cm3,TPVVは391 ± 32.6cm3であり,BSAとの間に正の相関がみられ,TPVV/BSAは235.4 ± 15.9(R = 0.69)であった.また,PAIとTPVVの間にも相関がみられた(R = 0.71).【結論】TPVVとBSAの間には正の相関がみられ,計測値の標準化が可能であった.また,従来のPAIとの相関がみられ計測値は妥当であった.【結語】Fontan手術症例やTOF症例では肺血流が少なく,肺血管容積が小さいと推測される.今回の方法を用いて,肺血管床のより正確な測定が可能となり,さらに正確な手術適応の決定,予後の推測が可能となると思われる.

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