I-E-26
小児期にもすでに肥満に伴う脳血管機能変化は存在する
はらだ小児科医院
原田健二

【目的】小児期の肥満は成人期脳心血管病発症のリスクとなる.小児期にもすでに肥満に伴う心臓機能障害が認められるが,肥満の脳循環動態に及ぼす影響に関する知見はほとんどない.本研究目的は肥満における脳血流速度波形を解析し,血流速度波形に影響を及ぼす因子を明らかにすること.【方法】対象は肥満度20%以上の小児50例(年齢11 ± 5 歳)と同年齢の正常小児40例.アロカSSD-6500を用いて,経頭蓋的に側頭骨ウインドウから中大脳動脈の血流信号を検出した後,パルスドプラ法を用いて血流速度波形を記録.収縮期最大血流速度(PSV),拡張末期血流速度(DV),平均血流速度(APV),収縮期および拡張期血流速度時間積分値(S-FVIおよびD-FVI)を計測.これらからpulsatile index(PI) = (PSV-DV)/APVを算出した.血管機能の指標として頸動脈intima-media thickness(IMT)および頸動脈stiffness indexを計測した.肥満小児に脂質・血糖および高感度CRP検査を行い,インスリン抵抗性の指標としてHOMA-Rを算出した.【成績】Body mass index(BMI)が25未満の肥満小児では中大脳動脈血流速度,pulsatile indexは対照と有意差は認めなかった.BMIが25以上の肥満小児ではpulsatile indexは対照に比し有意に高値(1.05 ± 0.10 vs.0.92 ± 0.14,p < 0.01),中大脳動脈平均血流速度は有意に低値(70 ± 15 vs. 79 ± 14cm/sec,p < 0.05)であった.Pulsatile indexはHOMA-Rと弱いが有意な相関(r = 0.40,p < 0.05)を認めたが,高感度CRP,IMT,stiffness indexいずれとも有意な関係は認めなかった.【結論】肥満小児にみられた中大脳動脈pulsatile indexの高値は測定部より末梢での血管抵抗増大を意味しており,小児期にもすでに肥満は脳血管床に血流変化を来す.本研究から得られた所見は,subclinicalな機能変化は小児脳血管にも認められることを示唆する.

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