I-E-28
総動脈幹症における大動脈起始と心室中隔欠損サイズの関係
インペリアルカレッジロンドン国立心肺研究所心臓形態学部門1),王立ブロンプトン病院心臓胸部外科2),小児循環器科3)
安達偉器1),上村秀樹2),Anna Seale3),Karen McCarthy1),Siew Yen Ho1)

【背景】総動脈幹は通常,大きな心室中隔欠損に騎乗しつつ,左右両心室のほぼ中央から起始する.しかし時として,総動脈幹起始は左右いずれかの方向に偏位し,さらには狭小心室中隔欠損を伴う.総動脈幹右室起始症例における解剖学的修復術では,心室中隔欠損が主たる左室流出路となる.【方法】剖検例(n = 56)と臨床例(n = 12)において,総動脈幹起始を評価した.臨床例の評価には,術前心エコー(左室長軸拡張末期像)を用いた.総動脈幹起始は以下の 5 タイプに分類した;両心室均等起始,右室(もしくは左室)優位起始,完全右室(もしくは左室)起始.剖検例において,心室中隔欠損サイズ(“幅”と“深さ”)を計測し,総動脈幹起始との関係を評価した.さらに剖検例では,総動脈幹弁と僧帽弁との線維性連続の有無を評価した.【結果】剖検例・臨床例ともに約半数(52% vs 50%)において均等起始を認めた.残りの約半数の不均等起始症例に関して,剖検例では右室起始全体(優位および完全を含む)を左室起始全体より高頻度(40% vs 9%)に認めたのに対して,臨床例では頻度に差はなかった(25% vs 25%).均等起始,右室優位起始,完全右室起始の順に,総動脈幹の右方偏位が進むにつれて,心室中隔欠損の“幅”は有意に小さくなった(均等起始 vs 右室優位起始, p < 0.0001; 均等起始 vs 完全右室起始,p < 0.0001).有意差は認めないものの,同様の傾向を心室中隔欠損の“深さ”にも認めた.1 例を除く剖検例のすべてにおいて,総動脈幹弁と僧帽弁の線維性連続を認めた.線維性連続を欠く 1 例は,極度の完全右室起始を有し,心室中隔欠損はスリット様であった.【結論】総動脈幹症において,総動脈幹起始には解剖学的多様性が存在し,右室起始は狭小心室中隔欠損と有意に相関する.したがって,総動脈幹起始の術前評価は外科的意義を有すると考える.

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