I-E-31
TCPC術後の肝機能障害の検討
京都府立医科大学大学院医学研究科小児循環器・腎臓学
加藤竜一,糸井利幸,岡建城

【はじめに】TCPC術後に血行動態が破綻すると,慢性肝障害から肝硬変を来すことが知られている.しかし,良好なフォンタン循環であっても,IVC圧上昇に起因するγ-GTP高値を認める例が多いことは,前回本学会で報告した.今回新たに,鋭敏な肝線維化マーカーとして知られる 4 型コラーゲンに注目して検討を行った.【症例】2003年 5 月~2009年 1 月に当院でTCPC術後カテーテルを施行した35例(年齢:3.9 ± 2.2歳,TCPC術後期間:24.1 ± 21.2カ月)で,いずれも臨床上フォンタン循環は良好である.なお,血液検査結果はカテーテル検査実施日に可能な限り近いものを採用した.【結果】TCPC術後カテーテル検査にて,IVC圧は13.9 ± 3.2mmHg,平均PA圧は12.9 ± 3.5mmHgであった.また血液検査上,γ-GTP 63.1 ± 50.5IU/l,GOT 43.3 ± 9.6IU/l,GPT 22.9 ± 6.9IU/l,T-bil 0.73 ± 0.25mg/dlと,トランスアミナーゼ値異常を伴わないγ-GTP上昇を認めた.これらのうち21症例で血清 4 型コラーゲンを測定し,LA 288.8 ± 96.7ng/ml(基準値;0~150),7S 7.3 ± 2.2ng/ml(基準値;0~6.0)とそれぞれ上昇を認めた.これを21症例のIVC圧中央値 15mmHgで区切って比較すると,IVC圧 < 15mmHgの 9 例でLA 245.4 ± 89.9ng/ml,7S 6.2 ± 1.2ng/ml,IVC圧 ≧ 15mmHgの12例でLA 324.2 ± 90.7ng/ml,7S 8.2 ± 2.4ng/mlであった.【考察】TCPC術後にはγ-GTPだけでなく,肝線維化マーカーである血清 4 型コラーゲンの上昇も認め,それは慢性肝炎や肝硬変と同レベルの高値であった.良好なフォンタン循環でも,術後早い段階から肝障害を来していることが示唆され,注意深い経過観察が必要であると考える.

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