I-P-5
心室中隔欠損の部位別頻度の検討
近畿大学医学部小児科
三宅俊治,篠原 徹,井上智弘,丸谷 怜,竹村 司

【背景】カラードプラ法は,小短絡の心室中隔欠損(VSD)の発見を容易にした.新生児期の心エコースクリーニングでは,筋性部欠損(M-VSD)の頻度が最も高く,日本人のM-VSDの発症頻度は1.2~2.0%である.【目的】カラードプラ法導入後のVSDの部位別頻度の変化を検討すること.【方法】1986年 1 月~2008年12月の23年間に出生し,3 カ月以内にカラードプラ法でVSDと診断された673例である.Down症候群は除外した.期間を,出生年で(1)1986~1990,(2)1991~1995,(3)1996~2000,(4)2001~2005,(5)2006~2008に分類した.2001年から 1 施設で新生児全例の心エコースクリーニングが施行されている.VSDの部位は,肺動脈弁下欠損(S-VSD)87例,傍膜性部欠損(P-VSD)408例, M-VSD 178例に分類した.部位別に出生月別頻度を検討した.【結果】部位別の頻度: S-VSDは(1)18%(2)15%(3)10%(4)11%(5)11%,P-VSDは(1)73%(2)64%(3)60%(4)53%(5)54%,M-VSDは(1)9%(2)22%(3)29%(4)36%(5)34%と推移した.出生月別頻度:S-VSDおよびP-VSDでは出生月による頻度に差を認めなかったが,M-VSDは 4~6 月の 3 カ月(16%)で頻度が低かった.さらに2000年以前(前期)と2001年以後(後期)に分類すると,その傾向は異なり,前期では 1~6 月(32%)で,後期では 4~6 月(15%)と10~12月(17%)で頻度が低かった.【考察】1990年までは,M-VSDの頻度は低かったが,以後徐々に増加した.その要因としては,短絡量の少ないM-VSD例が増加したことが考えられる.特に2001年以降は,心エコースクリーニングの関与が考えられる.しかしながら,前期10年間および後期13年間のいずれでも,M-VSDでのみ出生月による頻度の差を認めており,他の部位との成因の違いが推測される.【結論】M-VSDは,相対的頻度が徐々に増加し,かつ他の部位と異なり出生月別頻度に変動を有しており,その要因を検討する必要があると考える.

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