I-P-29
予後不良な経過をたどったNoonan症候群を有する多源性心房頻拍の 2 乳児例
宮崎大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野
久保尚美,高木純一,近藤恭平,大塚珠美

多源性心房頻拍(MAT)は比較的まれな頻拍で,小児では特発性が多く,約 1 歳までに洞調律化し良好な経過をたどることが多い.薬剤治療には抵抗性で,電気的除細動は無効であり,rate control不良であれば頻脈誘発性心筋症を来すこともある.今回Noonan症候群を有し,重篤な呼吸障害を伴い,予後不良な経過をたどったMATの 2 乳児例を経験した.【症例 1】1 カ月男児.胎児水腫のため緊急帝王切開にて出生.乳び胸,呼吸不全のため,胸腔ドレナージ,人工呼吸管理施行.心エコー上心室壁・心室中隔肥厚を認めた.1 カ月時MAT出現し,rate control目的でベラパミル内服開始.乳び胸に対し,オクトレオチドを使用するも難治,呼吸状態は増悪傾向.日齢57に呼吸循環不全のため永眠.【症例 2】22生日男児.胎児水腫のため緊急帝王切開にて出生.乳び胸,呼吸不全を認め,胸腔ドレナージ,人工呼吸管理を施行.心エコー上心室中隔の著明な肥厚を認めた.日齢22よりMAT出現し,rate control目的でアテノロール開始.乳び胸に対しオクトレオチド・デキサメサゾン使用.日齢65まで呼吸管理施行.以後も呼吸状態は不安定で,MATも頻発.4 カ月時呼吸管理を再開したが,呼吸状態は安定せず,rate controlにランジオロール使用するも反応不良.6 カ月時呼吸循環不全のため永眠.【考察】MATは慢性呼吸器疾患に合併してよくみられ,呼吸循環不全が急激に進行した際に発症することが多い.機序として低酸素・高炭酸ガス血症における血中カテコラミン濃度上昇が関与するといわれる.小児では特発性が多いが,Noonan症候群合併例も散見される.原因として,胎児期のリンパ還流異常に基づく浮腫やリンパ管拡張があり,心房壁のリンパ管拡張が関与している可能性が報告されている.重度呼吸障害を伴ったNoonan症候群では,MATは治療抵抗性で,その循環動態に及ぼす影響も非常に大きいと考える.

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