I-P-74
成人期先天性心疾患患者の精神心理的問題—チアノーゼが残存している患者における問題の検討—
さいとうクリニック1),東京女子医科大学循環器小児科2)
太田真弓1),篠原徳子2),山村英司2),富松宏文2),森 善樹2),中西敏雄2)

【背景】成人期先天性心疾患患者では,不安,抑うつなどの精神心理的な問題の頻度が多いことは以前に報告した.成人期先天性心疾患患者の中には心内修復術やFontan手術に至らず,現在までチアノーゼが残存している例も見受けられる.チアノーゼ残存例では運動機能低下や在宅酸素療法の施行,血栓症,腎機能障害など合併症により日常生活の制限を来すことが知られており,そのQOLは心内修復術後やFontan術後に比し,低下していることが多い.【目的】今回われわれはチアノーゼが残存している成人期先天性心疾患患者における精神心理的問題について検討した.【対象と方法】対象は東京女子医科大学循環器小児科病棟に入院した成人期先天性心疾患患者のうちチアノーゼが残存している患者24例(20~52歳)で,ぞれぞれの患者に対して半構造化面接と社会的背景の聴取,パーソナリティ評価のためにMinnesota Multiphasic Personality Inventory(MMPI)を施行した.対照として心内修復術後の患者(非チアノーゼ群)29例(20~42歳)も同様の面接と評価を行った.【結果】チアノーゼ群では非チアノーゼ群に比し,MMPIで心気的,抑うつ,ヒステリー尺度が高く,パーソナリティ評価としては受動的依存性が強く,抑うつ的でエネルギー水準が低く,仕事に対して意欲がない傾向が高かった.不安尺度では両群で差はみられなかった.またそれらの尺度は職歴や学歴,合併症の有無とは相関がなかった.また自我強度は両群ともに異常低値であったが,差はなかった.【考察】チアノーゼが残存する成人期先天性心疾患患者では不安の程度は正常範囲であるが,抑うつが高い傾向があった.また自尊心や社会的資源も低かった.長期にわたる運動能力の低下など日常生活に制限が多いことにより,抑うつが生じる可能性がある.これらの患者における抑うつの症状は,心疾患の症状による日常生活の制限以上にQOLの低下を来す可能性があり,早期の介入の必要性がある.

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