I-P-100
2,000g以下の低出生体重先天性心疾患児の治療と予後についての検討
九州厚生年金病院小児科1),心臓血管外科2)
倉岡彩子1),大野拓郎1),熊本 崇1),原 卓也1),上田 誠1),弓削哲二1),渡辺まみ江1),城尾邦隆1),落合由恵2),井本 浩2),瀬瀬 顯2)

【背景】低出生体重の先天性心疾患(CHD)児は,治療選択が限定されるとともに未熟性のため合併症のリスクが高く治療に苦慮することが多い.【目的】新生児期から継続的治療を要した低出生体重CHD児の治療経過・予後を明らかにする.【対象・方法】対象は1998~2008年の11年間に2,000g以下で出生したCHD児84例(男43,女41):出生体重1,691g(460~2,000g),在胎週数35週 6日(25週 3 日~41週 3 日).対象をA群[40例(18 trisomy 7)]:治療方針決定のための心臓カテーテル検査までNICU入院を継続,B群[33例(18 trisomy 1)]:内科的治療のみで一旦退院,C群[11例(18 trisomy 7,13 trisomy 1)]:心カテ前に死亡とし診療録より後方視的に検討した.【結果】出生体重はA:1,645g,B:1,808g,C:1,298gで,疾患群では肺血流減少型10例(TOF,PSなど),肺血流増加型63例(VSD,ECD,COAなど),混合型11例(TGA,TAPVCなど)であり,15例でPGE1による動脈管維持療法を行った.A群の疾患内訳は肺血流減少型 6 例,増加型26例,混合型 8 例であった.心不全増悪による長期人工呼吸管理を 8 例(18 trisomy 4)に要した.30例に心臓手術が実施され,初回手術時の体重2,670g(1,600~4,590g),日齢81.5日(4~295日)であった.A群での死亡例は10例[18 trisomy 4(根治後 1),心カテ(BAS) 1,SIDS疑い 2(根治後 1),姑息術後循環・呼吸状態の悪化 3]で手術関連死亡はなかった.A群のうち23例で根治術が終了し,自院フォロー中の生存例16例では14例が心機能良好,2 例に肺高血圧が残存している.B群は一旦退院後に22例が根治術を終了している.C群は染色体異常症や代謝異常,感染症など重症合併症のために救命できなかった.【考察】生命予後の厳しい染色体異常などを除けば,低出生体重児における先天性心疾患の治療成績はおおむね満足できる.しかし,未熟性による突然死のリスクなどが術後遠隔期死亡に関連する可能性もあり慎重な経過観察が必要である.

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