I-P-101
先天性心疾患児に対するパリビズマブの有効性と安全性の検討—多施設共同研究—
近畿小児循環器パリビズマブ投与検討委員会
篠原 徹,越後茂之

【目的】CHD児へのパリビズマブ(以下本薬剤)投与が保険適応となったのを契機に近畿 2 府 4 県の小児循環器疾患を扱う主要施設の代表が委員会を立ち上げ,本薬剤の有効性と安全性を検討した.【対象と方法】(1)投与対象は添付文書の記載どおり「24カ月齢以下の血行動態に異常をもつ先天性心疾患児」.これまで 3 シーズンの調査を行ったが,調査結果公表に対する保護者の同意を得た2007年 9 月~2008年 4 月のデータを検討の対象とした.(2)本薬剤を投与した症例に対し性別,原心疾患と合併症,児の状態,初回投与月と月齢,各回投与時の体重,薬剤コンプライアンス,呼吸器感染罹患頻度と入院の有無,RSウイルス感染の有無などについてアンケート調査を行った.さらに,RSウイルス罹患症例は何度目の投与後か,最終投与から何日目か,罹患月齢,罹病月,症状,入院期間,ICU入室期間,酸素投与期間,挿管の有無,予後などについても検討した.【結果】(1)投与例は620例(男311例,女309例)であった.(2)原心疾患では心室中隔欠損が最多であり,合併症でダウン症をはじめとする染色体異常が多数を占めた.(3)1/3~1/2の症例で体重増加不良,哺乳力不良,呼吸障害,チアノーゼなどが単独あるいは複合して認められた.(4)投与開始月は10月が最多で,3 カ月までに投与が開始された症例が41%であった.(5)外科治療や軽症化などで16%が途中で投与中止となった.(6)RSウイルス感染での入院は 4 例(0.6%)で,うち 3 例は酸素投与を必要としたが,1~2 週間の経過で退院となった.1 例は 5 回投与後にもかかわらず罹患した.(7)因果関係があると思われる有害事象を 4 件(発赤・腫脹 3 件,発疹 1 件)に認めた.【考察と結論】(1)パリビズマブの投与を行ったCHD児のRSウイルス感染による入院率は0.6%と非投与集団に比べ明らかに低値であった.また,罹患児も重症化しなかった.(2)有害事象の頻度は少なく,重大な副作用も認めなかった.

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