I-P-102
動脈管依存性先天性心疾患に対するプロスタグランジンE1製剤投与における低ナトリウム血症についての検討
埼玉県立小児医療センター循環器科
伊藤怜司,河内貞貴,菅本健司,菱谷 隆,星野健司,小川 潔

【背景】プロスタグランジンE1(PGE1)は動脈管開存維持に有効だが,副作用が問題となることがある.低Na血症もよく経験されるが詳細な検討は少ない.【目的】PGE1使用例での低Na血症発症要因を明らかにすること.【方法】1984~2007年に当施設でPGE1を用いた258例に対し,診療録から臨床像,血清Na値につき後方視的に検討した.血行動態からA肺循環依存性疾患,B体循環依存性疾患,C体循環混合依存性疾患と 3 群に分け比較検討した.なお,低Na血症は重度を125mEq/l以下,中等度を130mEq/l以下と定義した.【結果】対象はA群125例,B群49例,C群84例,平均在胎週数38.8 ± 1.5週,出生体重2,949 ± 497g,PGE1製剤はリポ化製剤単独が77%,使用量 5ng/kg/minが81%であった.入院時に低Na血症を認めた例はなく,腎不全 2 例,ductal shock 24例であった.低Na血症は中等度79例(30%),重度47例(18%)(最低値112mEq/l),投与開始は早期新生児期が85.3%,発症時期は開始後 1~3 日後が73.8%であった.A群,低出生体重,早産児,ANP高値例で有意に低Na血症を来しやすく(p < 0.05),PGE1投与量とは相関はなかった.【考察】PGE1は尿細管に作用しNa利尿効果を表すが,投与量との相関が得られない理由として成人と比較し総投与量が多いことが考えられた.発症時期に関して,一般に日齢 1~3 はNa再吸収などの腎機能が未熟で早産児ほどその傾向が強い,また心不全によるNa利尿ペプチドの上昇とPGE1の作用が影響し合い,Na排泄亢進の結果として低Na血症を来したと考えられた.【結論】従来の報告と比較し低Na血症発症頻度が高かった.低出生体重,早産児,ANP高値例では低Na血症を来しやすい傾向にあり,注意が必要である.

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