I-P-105
Fenestrated Fontan手術の術後中長期臨床像
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓外科
枡岡 歩,加藤木利行,岩崎美佳,鈴木孝明

【背景】Fenestrated TCPCを導入することでhigh risk症例に対してもFontan手術を行ってきたが,fenestrationの設置は遠隔期問題の対策としても有用であると考えている.【目的】Fenestrated TCPC症例の中長期臨床像を検討した.【対象】1998年 1 月~2009年 1 月のTCPC 35例中,fenestrated TCPC 29例(手術時年齢2.6 ± 1.7歳,体重11.0 ± 2.5kg,isomerism 10例,単心室症 8 例,DORV 5例,三尖弁閉鎖 3 例,PA-IVS 2 例,ほか 1 例,術式はlateral tunnel 6 例,extracardiac conduit 23例). 【結果】平均観察期間は40.5 ± 39.9カ月(2 ~125カ月),手術死亡 2 例,ほかは外来通院中.遠隔期fenestration開存例は20例で動脈酸素飽和度は90.6 ± 4.6%,7 例においてfenestrationは自然閉鎖し動脈酸素飽和度は95.7 ± 2.1%(p < 0.05).また開存例の遠隔期平均肺動脈圧は11.0 ± 2.9mmHg,自然閉鎖例では11.0 ± 2.0mmHg(p > 0.05).再手術は 2 例,房室弁閉鎖不全にて術後 6 カ月目に人工弁置換術を,別の 1 例は術後10年目に大動脈弁閉鎖不全にて人工弁置換術を施行.この症例は術後早期にfenestration が一旦自然閉鎖したが,大動脈弁閉鎖不全の進行とともに再開通した.また,術前II度以上の房室弁閉鎖不全 2 例,PA index 200未満 4 例(最低値74),平均肺動脈圧15mmHg以上 2 例のhigh risk症例では,fenestrationは全例遠隔期に開存しており,動脈酸素飽和度は89.7 ± 1.9%.これらでも遠隔期にPLEや肝硬変,不整脈などの合併症は認めず元気に外来通院している.【考察】Fontan循環は基本的に低心拍出状態であり,術後の不安定期にfenestrationが有用であることは明らかであるが,術後10年目にAVRを施行した症例のfenestrationが再開通したことや,high risk症例の中長期経過などから考えると,fenestrationは遠隔期においても危機的な低心拍出状態を防ぐためのsafety valve的な役割を果たしており,遠隔期問題の対策として有用である可能性が示唆された.

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