I-P-106
TCPC手術後中期遠隔期の問題点と対策について
大阪市立総合医療センター小児心臓血管外科1),小児循環器内科2)
前畠慶人1),西垣恭一1),川平洋一1),村上洋介2),江原英治2),鈴木嗣敏2),小澤有希2)

【背景】近年,段階的手術や経皮的カテーテル治療(PCI)の介入によりTCPC手術の適応の拡大がはかられるとともに,外科治療成績の向上がみられている.しかしTCPCはいわゆる機能的修復にすぎず,遠隔期にも種々の問題が発生し得る.【目的】TCPC後の中期遠隔期成績を検討し,さらなるQOLの向上をはかる.【対象】1997年~2009年 1月に,当科で施行し耐術したTCPC症例は78例であった.うちGlenn手術を挟む段階的TCPCは69例(88%),手術時年齢は中央値2.2歳(1~11.6歳),術後観察期間は6.2 ± 3.6年であった.性別は男:女 = 43:35であった.【結果および考察】Glennまでtake downしたのは 3 例 4 回,1 例は難治性PLEを発症し 2 度TCPCを行い 2 度take downを要した.他の 2 例は無脾症候群で構造的肺静脈狭窄が関与していた.肺動脈狭窄をPCIにて解除した症例は 7 例 8 回あった(9%).術後PCI介入時期は中央値14.0カ月(4.0~85.7カ月)であり,より早期に介入するほうが効果が高いと考えられた.SSSのためPMIを要した症例は 2 例あった.術後 3 カ月より心不全が明らかとなり胸腹水が貯留したため,開胸下に左心耳に心房電極を留置しAAIペーシングを施行した.その結果,胸腹水の消失と心拍出量の改善(平均CI: 3.4から4.7l/min/m2)を認めた.また術後次第に瘤化した右室の奇異性収縮により心拍出量がlossしていると考えられたTA(1b)症例において,術後11カ月で,右室壁縫縮とVSDパッチ閉鎖を行い心機能の改善を得た(CI:3.2から4.3l/min/m2).またDKS吻合部の肺動脈弁逆流増悪に対し弁形成術を行ったものが 1 例あった.以上の介入により遠隔死亡はなくNYHAはIが71例,IIが 4 例である.投薬は抗凝固剤を49例,利尿剤を36例,抗不整脈薬を14例,肺血管抵抗降下薬を10例に行っている.【まとめ】TCPC後も原疾患に特有な病態に留意し,遠隔期においても厳重な経過観察と,有効な治療介入を検討していく必要がある.

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