I-P-108
Fontan手術において肺動脈径因子が術後経過に与える影響
茨城県立こども病院心臓血管外科1),小児科2)
坂有希子1),阿部正一1),野間美緒1),五味聖吾1),菊地 斉2),村上 卓2),塩野淳子2)

【背景・目的】Fontan手術において,その適応は肺動脈径(PAI),肺血管抵抗値,肺動脈圧により決定され,狭小肺動脈径におけるFontan手術の適応に関してはまだ議論の余地がある.本院におけるFontan手術の手術成績を振り返り,肺動脈径因子がFontan手術後の経過に与える影響を検討する.【対象・方法】1998年10月~2009年 1 月にFontan手術を施行した30例を対象とした.Fontan手術前のPAI < 150をハイリスク群(H群),PAI ≧ 150をコントロール群(C群)として,この 2 群間での手術成績を比較した.【結果】30例中,H群は 4 例(13.3%)でPAI = 114.1 ± 12.6であり,C群は26例(86.7%)でPAI = 240.1 ± 106.8であった.その他の肺血行動態値として肺血管抵抗値はH群で2.0 ± 1.1Wood unit・m2,C群で2.8 ± 1.2Wood unit・m2であり,肺動脈圧はH群で12 ± 3.8mmHg,C群で13 ± 3.1mmHgで,いずれの肺血行動態値も両群間で有意差は認めなかった.Fontan手術は全例に心外導管法を選択し,左心低形成症候群のH群の 1 例に計画的にfenestrationをおいた(PAI = 102).H群,C群ともに周術期死亡・在院死亡・遠隔期死亡は認めず,Fontan循環不成立によりtake downに至った例も認めなかった.術後の胸水貯留期間はH群で21.7 ± 10.4日,C群で13.6 ± 9.1日であり,H群で胸水遷延の傾向があるが両群間には有意差は認めなかった.乳び胸の発症率はH群で 4 例中 0 例(0%),C群で26例中 9 例(34.6%)に発症した.【結論】H群でのFontan手術における手術成績はC群での手術成績とほぼ同様のものであった.狭小肺動脈径でのFontan手術の適応は他の肺血行動態値が許容範囲内であれば,耐術の可能性が十分にあると考えられた.

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