I-P-109
小児期に適応外と診断され,15歳以上でFontan型手術を行った機能的単心室
慶應義塾大学医学部小児科1),心臓血管外科2)
土橋隆俊1),潟山亮平1),古道一樹1),前田 潤1),福島裕之1),饗庭 了2),山岸敬幸1)

【はじめに】当院では機能的単心室の症例に対して,1974年よりFontan型手術を積極的に行ってきた.約30年の間に,Fontan型手術の術式・適応基準は変遷してきた.小児期にFontan型手術適応外と診断され思春期および成人期に達した 5 症例に対して,低酸素血症を改善する目的でFontan型手術を行った.【対象】機能的単心室疾患 5 例(男性 3 例,女性 2 例).左室型 2 例,右室型 1 例,両心室型が 2 例.内臓錯位症候群は 2 例(無脾 1 例,多脾 1 例)であり,他の症例は内臓正位であった.全症例に計 9 回(1~3 回)の体肺シャント術が行われていた.肺動脈絞扼術を行った症例はなかった.症例の酸素飽和度は82.4 ± 4.2%(77~88%),肺血管抵抗値は1.46 ± 0.78単位・m2(0.49~2.61)だった.小児期にFontan型手術の適応外とされた理由は,PA index低値 2 例,心機能低下 3 例だった.NYHAクラスIIが 4 例,クラスIIIが 1 例だった. 3 例は就業していた.【結果】多脾の 1 例を除く 4 症例では,はじめにBCPS術を行い,段階的にTCPC術を行った.TCPC術時の年齢は23.9 ± 6.5歳(15~29歳).3 例で術前に, 計 5 回に及ぶ体肺側副異常動脈に対するコイル塞栓術を行った.2 例に対し,TCPC術前にMRIにより機能的単心室の心機能評価を行い,良好な結果を得た.6 例中 5 例は,術後経過良好(観察期間 3 カ月~13年:平均6.25年).多脾症候群の 1 例が,TCPS術後の右心不全と,残存した側副異常動脈が原因と考えられる肺出血により,術後 3 カ月で死亡した.【まとめ】小児期にFontan型手術適応外と診断され成人期に達した症例において,段階的Fontan型手術を行い,良好な成績を得た.PA indexが低値であっても,肺血管抵抗値が低く,MRIによる心機能評価が良好であれば,比較的安全に手術が可能と考えられた.体肺側副異常動脈が発達した症例で,術前のコイル塞栓術により完全閉塞が困難な場合,予後に影響する可能性がある.

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