I-P-110
良好なQOLを目指したFontan手術の治療戦略
京都府立医科大学附属小児疾患研究施設小児心臓血管外科1),京都府立医科大学心臓血管外科2),京都府立医科大学附属小児疾患研究施設小児内科3)
宮崎隆子1),山岸正明1),立石 実1),前田吉宣1),谷口智史1),田畑雄一1),川尻英長1),夜久 均2),岡建城3)

【目的】当院でのFontan手術(F術)治療戦略が遠隔期における良好なQOL獲得に寄与し得るかにつき検討した.【対象と手術】対象は1997~2008年にF術施行69例(TCPC conversion除外).疾患内訳はSV 26,DORV 11,TA/severe TS 9,PA/IVS 4,HLHS 4 ,CAVC 5,その他10,うちheterotaxia 23.先行手術は体肺動脈短絡(SP)術35,肺動脈絞扼術19.Unifocalization術 2.段階的F術は58例(84.1%)で2004年以降全例.Glenn(G)術時年齢は中央値0.93歳(3.8カ月~17.2歳),G術~F術待機期間は平均1.2 (0.2~2.5)年.G術時additional shunt残存24例(2007年以降なし).中心肺動脈(CPA)形成はSP術時 8,G術時23,F術時12.F術時PA indexは平均318.2mm2/m2.房室弁形成はG術時 7,F術時10.F術前平均SaO2 84.1%.2005年以降はG術後(additional shunt残存例以外)とF術後は全例HOT使用.F術時年齢は中央値2.2(1.4~18.1)歳,体重は10.0(6.3~46.5)kg.心内導管(PTFE)12,心外導管57(自己心膜ロール 4,PTFE 52,その他 1:2003年以降全例PTFE).体外循環(CPB)非使用F術 7 例(2002年以降全例CPB使用).Fenestration付加 2 例.全例抗凝固療法施行.【結果】F術後観察期間は平均4.4(0.1~11.5)年.遠隔死 1 例(青年期F術施行例.再手術後に肝腎不全).自己心膜ロール狭窄に再手術 1 例.CPA狭窄残存なし,mild以上房室弁逆流なし.主心室平均駆出率は,G術後61.8%,F術後61.6%であったが,G術~F術待機期間が 1 年未満群の65.9%に対し 1 年以上群で57.2%と有意に低下.術後肝腎不全,PLE,不整脈の合併なし.術後CVPは平均11.6mmHg(全例20mmHg以下).全例NYHA I.【考案】左右均等肺血管発育と心室機能を温存する初回肺血流調節,G術時のCPA狭窄解除,房室弁逆流修復,適切なF術までの待機期間(約 1 年),F術時CPB下に肺動脈と心外導管デザインに留意する治療戦略を採用.ほぼ満足のできる遠隔成績が得られ,本治療戦略が良好なFontan循環獲得に寄与する可能性が示唆された.

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