I-P-111
Apico-caval juxtapositionにおけるextracardiac TCPC—ルート選択は正しかったか?—
筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器外科1),茨城県立こども病院心臓血管外科2)
加藤英之1),平松祐司1),阿部正一2),五味聖吾2),金本真也1),野間美緒2),徳永千穂1),榊原 謙1)

【目的】Apico-caval juxtaposition(ACJ)を呈する機能的単心室症にextracardiac TCPCを行う際には,conduitルートを心尖のどちらに回すべきか逡巡することがある.当グループのACJ症例を振り返り,術式選択の妥当性を検証する.【対象】2003~2008年に行ったACJに対するe-TCPC 8 例(3~24歳,13.2~57.5kg).術前PAIは260.1(117~636),平均肺動脈圧は11.3mmHg(6~18).いずれもBCPSを経た段階手術として行った.2 例では心尖と同側にconduitを配し,6 例は対側に迂回させた.57.5kgの成人例に20mm conduitでfenestrated TCPCを行った以外は,18mm conduitをfenestrationなしで使用した.急性期はヘパリンを使用し,その後はワーファリン単独またはアスピリン併用により抗凝固を維持した(INR 1.5~2.0).【結果】体外循環時間は平均202分,大動脈遮断は平均58分,術後の平均肺動脈圧は13mmHg(10~20)で,ルートによる偏りはなかった.15歳以下の 7 例は通常の経過を辿った.24歳の低心室機能,心拡大例は癒着を避けて心尖の対側を通したが,術後の肺動脈圧は20mmHgと高くIABP補助を要した.8 日目にconduitが血栓閉塞し,除去手術を行ったが失った.生存 7 例は抗凝固のいかんによらず,平均観察期間49.7カ月(12~71)の範囲で血栓性,出血性合併症をみていない.【考察】TCPC適応条件の整ったACJにおいては,心尖のどちら側にconduitルートをとってもよく機能し,ワーファリン単独でもアスピリン併用でも血栓性,出血性合併症をみることはなかった.心拡大を伴う成人例では,ルートが長くなるうえにconduit-IVC吻合部での屈曲が生じやすく,血流停滞と血栓形成のリスクが高まる.より短く直線的なルートとするためにlateral tunnel等を考慮すべきであろう.【結論】ACJに対するe-TCPCは,conduitルートのいかんによらず一様に機能する.成人例では過長で屈曲しやすいルートとなり得る.

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