I-P-113
乳児期早期,完全型房室中隔欠損症に対する一期的根治術後中期遠隔期成績の検討
東京女子医科大学心臓血管外科1),循環器小児科2)
上松耕太1),岡村 達1),平松健司1),岩田祐輔1),小沼武司1),内藤祐次1),渡辺成仁1),石原和明1),中西敏雄2),黒澤博身1)

【背景,目的】肺高血圧の進行,房室弁逆流の増悪および心筋の求心性肥大を予防するため新生児期,乳児期早期に完全型房室中隔欠損症に対する一期的根治術が行われ良好な成績が報告されている.当院で乳児期早期に一期的根治術を行った症例の中期遠隔期成績を検討した.【対象と方法】2003年 8 月~2008年 3 月に,当院で完全型房室中隔欠損症に対する一期的根治術を行った10症例を対象とした.房室弁形態はRastelli A型が 9 例,C型が 1 例であった.共通房室弁逆流を 5 例に認め,うち 1 例には高度の逆流を認めた.21 trisomyを 5 例に認めた.手術時平均年齢,体重はそれぞれ121 ± 74日,4.2 ± 1.1kgであった.【結果】手術は全例two patch methodによる修復を行い,全例に僧帽弁および三尖弁形成を加えた.1 例で僧帽弁置換術を同時に行った.手術時間,人工心肺時間,大動脈遮断時間はそれぞれ352 ± 120分,214 ± 134分,136 ± 38分であった.平均入院期間は62 ± 27日だった.遠隔期死亡,再手術は認めなかった.10例中 9 例が軽快退院し,1 例は現在入院加療中である.術後観察期間は平均1,123日で,中期遠隔期に行った心臓超音波検査では平均LVSF 0.38 ± 0.06,MR 0: 1 例,mild: 6 例,moderate: 2 例認め,TR trivial: 2 例,mild: 7 例に認めた.左室流出路狭窄は認めなかった.また,VSDの遺残シャントを 1 例に認めた.術後中期遠隔期の平均CTRは52.0 ± 4.9%で,投薬内容はACE inhibitorを 8 例に利尿剤を 6 例に,プロサイリンを 1 例に投薬している.【考察,結語】乳児期早期の一期的根治術後中遠隔期の臨床経過は満足のいくものだった.左室流出路狭窄および重度房室弁逆流の増加を認めず,心不全も認めなかった.また,21 trisomy症例に対する根治術後の中期遠隔期成績は良好であった.

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